物語は後半からグダグダになっていくが、J・ワイマンのヒロイン振りは見応えアリ。
「心のともしび」(1954米)
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 大富豪の御曹司ボブはボートの事故で重体に陥る。搬送先の病院で救命器を使ってどうにか一命を取り留めたが、その代わりに持病の心臓発作で倒れた院長ウェインが命を落としてしまう。嘆き悲しむ妻ヘレンにボブは償いの意味から補償金を差し出した。しかし、彼女はそれを受け取らなかった。そんなある日、ボブは亡きウェイン医師の世話になった一人の老画家と出会う。生前の医師の聖人振りを知り今の自分の未熟さを恥じたボブは、改めてヘレンの傷ついた心を癒そうとするのだが‥。
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(レビュー) 放蕩息子と未亡人の交流を描いた感動ドラマ。
何となくC・チャップリンの名作「街の灯」(1931米)を連想させる物語だが、いかにもD・サーク監督らしいメロドラマになっている。しかし、いくら俗っぽさを狙ったメロドラマでも、ここまでご都合主義が続くといささか辟易してしまう。これはシナリオの問題だろう。さすがにメロドラマの巨匠サークと言えども、これを上手く料理するのは難しかったか‥。ありえないような軌跡の連続だけに、一歩引いて見てしまうと作り物臭さがどうしても匂ってしまう。ある程度割り切った上で鑑賞するしかないだろう。
他のサーク作品に比べて、キャラクターのリアクションが表層的なのも雑に思えた。例えば、夫の死に際のヘレンのリアクション、ヘレンを追いかけてスイスまでやって来た娘がボブを見た際に見せる態度。このあたりに引っかかりを覚える。基本的にキャラのリアクションをスマートに描くことでドラマを流麗に展開させていくのがサーク映画の一つの特徴だと思うのだが、これらはいずれも物語の中ではキーとなるシーンである。もう少しじっくりと描いても良かったのではないだろうか。ずっと似たような演出が続けば作品はどうしても平板に写ってしまう。要は抑揚の問題であろう。
サブキャラに関しては、概ね上手く機能していると思った。特に、ボブとヘレンの間を取り持つきっかけとして登場する少女の存在が良い。また、ベテラン看護師もへレンの良き理解者として実に頼もしい存在に思えた。
ただ、老画家については最初は良かったのだが、終盤のしたり顔には違和感を持ってしまった。年の功があるとはいえ、そこに説得力を持たせるべくバックストーリーが劇中で語られていないため、本来の役割を超えたものに写ってしまった。
ボブ役はD・サーク作品ではお馴染みの二枚目スター、R・ハドソン。演技に深遠さは無いが、サーク作品との相性で言えばかえって奏功しているように思った。逆に、ヘレン役を演じるJ・ワイマンは、見る者に色々と想像させるような奥行きを持たせた演技を披露していて◎。今回は役柄が役柄だけに「目」による演技が許されないのだが、そのマイナス面を上手く利用しながら悲劇のヒロインを好演している。