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十三人の刺客(2010)

満腹感が味わえるアクション時代劇。
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「十三人の刺客」(2010日)星3
ジャンルアクション
(あらすじ)
 江戸時代末期。将軍、徳川家慶の弟で明石藩主の松平斉韶(なりつぐ)が、老中の座に就こうとしていた。斉韶の残虐非道ぶりに危機感を募らせた老中、土井利位は、御目付役、島田新左衛門に斉韶暗殺の命令を下す。新左衛門は斉韶に慰み者にされた上、道端に捨てられた無残な少女の姿を見て怒りに打ち震えた。彼は早速、11人の凄腕の武士達をかき集めて斉韶暗殺計画を始める。そんな彼等の前に、斉韶の側近で新左衛門のかつての盟友鬼頭半兵衛が現れる。
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(レビュー)
 極悪非道な暴君に立ち向かう13人の刺客の戦いを、怒涛のアクションシーンで綴ったエンタテインメント作品。
 監督は鬼才・三池崇史。本格的な時代劇はこれが初めて(だと思うが‥)ということで、期待半分、不安半分で見た。尚、本作は1964年に一度映画化されているがそちらは未見である。

 結論から言うと、活劇に割り切った作りは鑑賞前の期待に十分応えてくれるものだった。13人の個性的なキャストの立ち回りを披露するクライマックスシーンは50分間も続き、活劇の醍醐味を存分に味あわせてくれる。夫々に印象に残る活躍、死に様が用意されているが、中でも松方弘樹はベテランだけあって鋭い殺陣を見せ「流石」と思わされた。

 また、敵役半兵衛を演じた市村正親の演技は全体を通して安定したパフォーマンスを見せ、こちらも好印象。割と呆け顔で通す斉韶役、稲垣吾郎の側近として、常時画面を引き締めた役割は大きい。確かに吾郎ちゃんの汚れ役への挑戦は新境地を開いたという意味で大いに評価できる。しかし、いつも傍にいる市村正親との比較から割を食っていることも確かで、終盤で見せたような演技の抑揚をその手前でも見せて欲しかった。

 逆に、コミカルさを狙ったキャラもいて、それが伊勢谷友介演じる山の民である。人里離れた山奥で暮らす野生児のごとき珍妙なキャラクターで、これはこれで中々不思議なテイストを持っていて面白い。周囲から浮いているという意見もあるかもしれないが、それは三池監督と、演じた伊勢谷の狙い以外の何物でもないだろう。アクションシーンに限らず、中盤の旅のシーンのコミカルさを狙った演出は全て彼の周囲で起こっており、シリアス一辺倒を貫く本作にあって、この山の民というキャラクターは今までの“三池印的悪ふざけ”が感じられる唯一の部分である。彼の絶倫振りを描くエピソードの下品さに笑わされた。

 ただ、そうは言っても、今回はあくまでシリアスさを売りにした作品であり、ギャグは全体を壊さない程度に抑えられている。過去の三池作品の“はっちゃけ”振りに多少辟易していた面もあったので、今回このくらいの笑いに抑えてくれたのは大変見やすかった。おそらくだが、脚本の天願大介は三池監督の“悪ノリ”の特徴を知ってか、ギャグの抑制をはかったのではないかろうか?本作が64年製作のオリジナル版にどのくらい忠実なのか分からないので判断のしようがないが、少なくともこれまでのような“悪ノリ”はかなり意識的に抑えられている。天願大介と言えば、彼の父親は映画監督の今村昌平である。そして、三池監督は今村昌平に師事した経歴を持っている。三池と天願の間にはこうした繋がりがあり、これまで2本ほどコンビを組んだ作品がある。今回見て、三池流の“悪ノリ”がいい具合に漂白されており、このコンビは中々上手くハマっているような気がした。前2作は未見であるが、いずれ見てみたい気もする。

 映像は前半の室内シーンにおける薄暗いトーンが良かった。邦画において代々受け継がれてきた日本家屋の薄暗さ。それを再現してくれているかのようで嬉しくなった。

 惜しむらくは13人のキャラクターの特徴を全て消化しきれなかったことで、これはさすがに時間的に言って無理があったのだろう。そもそも、クライマックスのチャンバラを最大限に見せようとした結果として、これはこれで仕方がない所だと思う。
[ 2010/11/01 18:07 ] ジャンルアクション | TB(0) | CM(0)

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