チェ・ゲバラの半生を描く後編。
「チェ 39歳 別れの手紙」(2008米仏スペイン)
ジャンル人間ドラマ・ジャンルアクション
(あらすじ) 1966年、キューバ革命を成し遂げたチェ・ゲバラはカストロに別れの手紙を送り、次なる革命の地ボリビアへと密航した。早速、独裁政治を打倒すべくゲリラ戦を指揮するが、戦況は圧倒的に不利だった。頼みの綱である地元共産党の支援も得られず苦戦を強いられるゲバラ。更に、アメリカ軍が参入してきたことで戦況は悪化の一途を辿っていく。
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(レビュー) チェ・ゲバラの半生を描いた伝記映画の後編。
あらゆる物語の基本構造は極論すると一つしかないと思う。それは極めてシンプルなものであって、主人公が「上昇」し「下降」していくというストーリーだ。古今東西、様々な物語があるが、全てを削ぎ落としていけば最終的にはこの形式に当てはめて考える事が出来る。主人公が低い地位、つまり「死」の状態にいれば、そこから這い上がろうと様々な障害を乗り越えて高い地位、つまり「生」の状態に上昇していく。逆に、主人公が高い地位に満足し驕り高ぶれば、いずれは没落していく。言わば、物語というものは「生」と「死」が循環することで初めて成り立つものだと思う。
この基本構造に当てはめて考えると、この2部作は前編が「死」から「生」の上昇ドラマで、後編は「生」から「死」の下降ドラマと言う事が出来ると思う。1本の物語として完成するには、本来なら前後編に分けるべきではないのだが、そこは仕方が無い。何せ両方合わせると4時間以上の長さになってしまう。インターミッションは必ず入る上映時間だ。本作は前後編揃って初めて成り立つ作品であり、仮に前編だけ見て後編を見ないと言うなら、それは実に勿体無い話である。出来れば前後編一気に見るのが一番好ましい。
この後編は、キューバ革命後から始まる。すでに革命の英雄となったゲバラが、単身ボリビアに乗り込み戦いに敗れるまでを描いている。敗因の一番の原因は民衆の協力が得られなかったことだろう。ボリビア人からしてみれば、キューバからやって来たゲバラは、いかに革命の英雄だとしても所詮は“よそ者”である。自分達の国の事をろくに知らず勝手に乗り込んできて戦争を始めるとは、何てはた迷惑な‥。かえって政府の圧制を強めるだけではないか。こういった声が上がるのをゲバラは読めなかった。今回の戦いは、同じ民族が固い絆で結ばれたキューバ革命とは根本的に違うのである。
演出は前編同様、ゲリラ戦を客観的視点で綴っていくというものだが、終盤だけはカメラがゲバラの内面に肉薄していく。このシーンは彼の無念の思いを見事に捉えきっており、ベニチオ・デル・ドロの熱演も相まって実に見応えがあった。
尚、本作は前後編合わせるとかなりの長時間になる大作であるが、実はこれだけかけても彼の全てを語る事は出来ていない。前後編の間に、キューバ革命達成の経緯が省略されているのだ。ゲバラが新生キューバ建国に尽力したエピソードや、カストロと別れてコンゴに遠征するエピソードが、バッサリとカットされている。ドラマとして見れば、ゲバラの「上昇」と「下降」に絞った描き方は必要にして十分という気もするが、伝記映画として見た場合は不十分な作りになっている。そこを補完したいというのであれば、
別掲のドキュメンタリー作品や他の著作物を見たりするのが良いだろう。