W・デフォーの存在感が抜群!
「処刑人」(1999米)
ジャンルアクション
(あらすじ) アイルランド系移民のマクマナス兄弟は、悪人どもを殺す影の処刑人だった。ある日、行きつけのバーでロシアン・マフィアとトラブルを起こし彼等を殺害する。兄弟はFBI捜査官ポールによって逮捕されるが、証拠不十分ですぐに釈放された。その後も兄弟は処刑人稼業を続けていく。今度のターゲットは麻薬密売組織。ところが、その仕事中にイタリアン・マフィアの運び屋で悪友のロッコとかち合う。ロッコは兄弟の処刑人稼業に共鳴し協力するようになる。
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(レビュー) 社会の悪を処刑する移民兄弟の活躍をスタイリッシュに描いたアクション映画。
法で裁けぬ悪は俺たちが裁くとばかりに、マフィアを次々と撃ち殺していく様は痛快である。思い出されるのが、C・ブロンソン主演のヒット作、デスウッシュ・シリーズだ。マクナマス兄弟の処刑も、世間からまるで聖人のように歓迎されていくところが皮肉めいていて興味深い。
彼等を追いかけるのはFBI捜査官ポール。本作のもう一人の主役と言っていいだろう。マクナマス兄弟を執拗に追跡しながら、彼は迷い始める。悪人始末をする彼らを誰が裁けようか?本当の正義とは何なのか?神父を挟んでマクマナス兄弟と対峙する告解シーンは見応えがあった。法律と道義のどちらを正義の拠り所にするか?彼の葛藤にカメラは迫っていく。
ただ、ポールのこの迷いからも分かるように、この映画は終始マクナマス兄弟の処刑を肯定して描いている。アクション・エンタテインメントとして気楽に見る分にはこれでもいいが、何となくマクマナス兄弟の処刑が美化され過ぎた感覚を覚えるも事実だ。彼らは敬虔なキリスト教徒という設定であり、そこに安易な正義の肯定性を見てしまう。オープニングとラストシーンを見ただけでもそれは分かる。明らかに彼等の悪人成敗が神示のごとく肯定されている。ここはドラマに奥行きを持たすべく、彼らにもポールと同様な葛藤を持たすべきだったのではないだろうか?少し物足りなさを覚えた。
もっとも、こうしたメッセージ性は見る側の受け取り方に拠る所であり、娯楽アクション作品には邪魔になるだけである。変に理屈をこねても単純に楽しめなくなってしまうので、割り切って楽しむが吉だろう。
キャストでは、ポール捜査官を演じたW・デフォーが印象に残った。前半こそ兄弟の造形のミステリアスさでドラマは牽引されていくが、後半からは完全に彼の独壇場になっていく。オペラをBGMに悦に浸りながら現場検証する序盤のシーンからして、只者じゃない感がプンプン匂ってくる。そして、極めつけは後半のオカマ演技!これには大いに笑わせてもらった。プロファイリングの際に突き出す指鉄砲も最高にイカす。彼のファンならこの映画はぜひ抑えておきたい1本である。
尚、本作は一部でカルト的な人気があり、何と10年経った後に続編が製作された。機会があればそちらも見てみたい。