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銀嶺の果て

かつての日本映画の勢いが味わえる娯楽快作!
銀嶺の果て [DVD]銀嶺の果て [DVD]
(2004/08/27)
三船敏郎、若山セツ子 他

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「銀嶺の果て」(1947日)star4.gif
ジャンルサスペンス・ジャンルアクション
(あらすじ)
 3人の銀行強盗犯が雪山に逃げ込んだ。彼らは温泉街に一時潜伏して警察の捜査を巻いた。しかし、途中で仲間割れを起こして、一人が雪崩に巻き込まれて死んでしまった。残った野尻と江島は、その後も逃走を続け、雪に閉ざされた小さなロッジに辿り着く。そこには質素に暮らす祖父と孫娘の春坊、そして客として来ていた青年本田がいた。何も知らずに彼等を温かく迎え入れる一同。野尻は久しぶりの安堵を覚える。しかし、若い江島はそれが気に入らなかった。
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(レビュー)
 雪山に逃げ込んだ強盗犯が辿る非情な運命を、過酷な大自然の中に描いたアドベンチャー・サスペンス作品。

 脚本は黒澤明。粗野な強盗犯江島役を三船敏郎が演じ映画デビューを飾っている。本作は二人の初顔合わせとなる記念碑的作品で、三船はこの後に黒澤監督の「酔いどれ天使」(1948日)のヤクザ青年に抜擢される。その時の獣のようなギラついた目で相手を威嚇する激情型キャラクターは、すでに本作にも伺える。演技自体は決して上手いというわけではないのだが、強烈な個性を放っているところに生来のスター性が垣間見れる。
 そして、江尻役を演じたのは、これまた以後の黒澤作品に欠かせぬアイコンとなっていく志村喬。本作を出発点にして三船&志村の競演作は立て続けに発表されていくが、動と静のコントラストがここでも抜群の相性を見せている。

 物語は黒澤らしい骨太なものであるが、正直序盤は少々退屈した。野尻と江島がロッジに着いてからが本題で、ここから俄然面白くなっていく。ロッジの住人との間で育まれる擬似家族的な交友が野尻と江島、両方の視点で描かれている。この相違が面白い。

 祖父と春坊と本田は、彼らを強盗犯と知らずに歓待する。その無償の愛に感動を覚えた野尻は、指名手配中の身ながらつい警戒心を解いてしまう。一方の江島は過去に相当荒んだ青春を送ってきたのだろう。それは彼の態度からも十分伺える。誰からも愛されなかった孤独感が彼を人間不信に陥らせ、和気藹々とした雰囲気に馴染めず背を向けてしまう。
 以後、ドラマは野尻と江島、夫々の葛藤に焦点を当てて綴られていく。そして、クライマックスとなる雪山脱出のシーンで、この葛藤はダイナミックに展開されていく。この辺りの盛り上げ方は実に律儀に構成されていて、黒澤の脚本には感心させられるばかりだ。また、この雪山脱出のシーンはサバイバル的な活劇も盛り込まれておりスリリングで見応えがあった。

 尚、本作は撮影も素晴らしい。前半の雪崩のシーンでドキュメンタリー映像を使用した事による不自然さはあったものの、当時の機材を考えればクライマックスの撮影はかなり野心的だと思う。身体を張った危険なアクションがシーンに生々しい迫力をもたらしている。

 また、映画の締めくくり方も感動的であった。テーマが真摯に発せられており、本田の“山の掟”という言葉には色々と考えさせられるものがあった。この言葉は“社会の掟”と言い換えることも可能だと思う。“社会の掟”を破った犯罪者、野尻と江島に投げかけられた言葉のように聞こえた。重層的なニュアンスが含まれたセリフで奥深い。

 音楽は伊福部昭。本作が彼にとっての初の映画音楽となる。重々しい音楽が監督の意図にそぐわず意見を対立させたそうだが、それを仲裁したのが黒澤明という逸話が残っている。黒澤も音楽には相当煩い方であったが、伊福部の主張が貫かれたというから、これに関しては監督ではなく黒澤の力添えが勝ったということになろう。結果としては正解だったように思う。
[ 2010/11/29 00:47 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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