変態映像作家フィンチャー先生‥!
「パニック・ルーム」(2002米)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) シングルマザー、メグは夫と離婚後、長女サラとニューヨークに引っ越してきた。その家には、前の住人が警護のために作った避難部屋があった。一旦中に入ると外からは絶対に開ける事の出来ない特殊な金属で囲われた小さな部屋である。引越の夜、3人組の強盗団がメグ達が就寝したのを見計らって押し入った。気付いたメグはサラを連れてとっさに避難部屋に逃げ込んだ。こうして彼らは避難部屋の内と外で対決することになる。
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(レビュー) 避難部屋(パニック・ルーム)に逃げ込んだシングルマザーと強盗団の戦いを描いたサスペンス・スリラー。
監督は鬼才D・フィンチャー。凝りに凝った映像で、母親と強盗団の攻防を息つく暇を与えない展開で見せきった手腕は流石である。また、ドラマの方も母娘の愛、強盗犯のバックストーリーを上手く拾い上げ一定の深みを醸している。全体的にはよく考えられているドラマだと思った。確かに1シチュエーションで展開されるのでストーリーの広がりは抑え目だが、アイディア優先の小品として見れば十分である。何より自分はこういった閉塞感漂う密室劇は割と好きである。欲を言えば、シナリオを更に刈り込んで100分以内のお手軽な映画にしてくれたら尚良かった。
メグ役を演じたのはJ・フォスター。それほどハードではないが、アクションシーンにも果敢に挑んでいる。終始薄着状態なのもサービス精神があって◎
サラ役を演じるのはこれが映画デビュー作となるK・スチュワート。その後、トワイライト・シリーズで人気若手女優の仲間入りを果たしていくが、本作では少女というよりも少年といった感じの中性的なルックで面白い造形となっている。ただ、デビュー作ということもあろう。演技がまだ固い上に、この年齢設定の割には少し堂々としすぎな感じがした。突然現れた強盗犯に対して母親顔負けの沈冷静着な立ち振る舞いを見せるのは、いくら自我が芽生え始めた少女だとしても堂々としすぎである。これではサスペンスの切迫感も薄れてしまう。彼女に関してはもう少し年相応の“か弱さ”を持たせて欲しかった。
一方、3人組の強盗犯も夫々に個性的に色分けされていて良かったと思う。日和見で短絡思考なリーダー。犯罪に手を染めるようには見えない善良なサブ・リーダー。計画の途中から参加する謎多き男。見ようによっては、この統一感の無さがドタバタ喜劇のように見せてしまっているのだが、そこはご愛嬌といったところか‥。逆に言えば、彼等の計画がどんどん狂って行くところに、人間の些末さ、愚かさが垣間見えブラック・ユーモア的な面白さも感じられる。スパイスの効いた悲喜劇‥という感じで面白く見れた。
映像は非常に凝っている。マイクロカメラを駆使した長回しは一体どうやって撮影したのだろうか?ドラマの舞台となる家を隅々まで写すのだが、ここまでこだわるとは、もはや“変態的”と言ってもいい。映像派作家フィンチャーのこだわりが感じられた。