設定は面白い。
「ルックアウト/見張り」(2007米)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 青年クリスは交通事故で恋人と親友を無くし、自らも記憶障害に陥った。現在は銀行の清掃員の仕事をしながら、盲目の親友ルイスとひっそりと暮らしている。そんなある日、バーでゲイリーという男と出会う。姉の恋人だと言う彼をクリスは慕うようになる。そして、彼の紹介でラヴリーという恋人に巡りあえた。仕事も恋も順調でクリスは正に天にも昇るような気分になった。ところが、その幸せはある事件に巻き込まれる事で脆くも崩れ去ってしまう。
楽天レンタルで「ルックアウト/見張り」を借りよう映画生活ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 事故の後遺症に苦しむ青年が犯罪に巻き込まれていくサスペンス映画。
クリスを演じたJ・ゴードン=レヴィットが中々に良い。初めて彼を意識したのは昨年見た
「<500>日のサマー」(2009米)だった。一見するとただの優男に見えるが、どこか神経質でヲタク気質も感じさせるところが面白い。「<500>日のサマー」では捻くれた性格の失恋男を演じていたが、本作も心に傷を負った孤独な青年を好演している。特別スター性を持っているわけではないが、クセのある内省的な人間をやらせると中々ハマる面白い俳優である。
クリスは事故の悲劇から遠ざかるようにして、全ての過去、家族と縁を切って生きている。誰もいない真夜中の銀行で清掃の仕事をしながら、相棒である盲目の中年男ルイスとまるで世捨て人のような暮らしを送っている。ところが、ある日そんな彼に新しい出会いが訪れる。しかし、喜びも束の間、彼は運命の悪戯で更なる過酷な”現実”を突きつけられることになる。言わば、この物語は彼がどうやってこの”現実”を受け止めていくか?その成長を描いたドラマと言う事が出来る。
ただ、テーマは十分理解できるのだが、いかんせんサスペンスとして見た場合、話が地味な上に前半の展開の水っぽさが作品を台無しにしてしまっている。そもそも、この事件そのものがクリスをどれほど成長させたのか?そこがはっきりと明示されていないのでどうにも引き締まらない。
他にも、脚本上の不満が幾つかあった。
クリスの記憶障害という設定は、C・ノーラン監督の傑作「メメント」(2000米)でも登場した設定だ。「メメント」はスピーディーなドラマ展開で見る者を複雑なパズル的世界に引き込んで放さなかった。しかし、本作は「メメント」ほどのスリリングさ、切迫感が無い。前半の冗漫な脚本の問題であり、演出上の問題もある。随分と気の抜けた作りで、見ていて歯がゆい思いにさせられた。せっかくの美味しい設定を活かしきれていないという感じがした。
また、ルイスとの関係性、あるいは彼の盲人という設定を活かすためのプロットが掘り下げ不足で、設定の消化不良も残念に思った。片や記憶障害、片や盲目。不幸にいる者同士だからこそ分かり合える友情が、そこにはきっとあるはずである。それを引き出すようなプロットがもっと欲しかった。
俳優と設定には見るべきものが多いが、全体的に演出、脚本が物足りない作品であった。