極限下でのサバイバル映画。人間模様が面白い!
「飛べ!フェニックス」(1965米)
ジャンルアクション・ジャンルサスペンス
(あらすじ) 石油会社の輸送機が砂嵐に巻き込まれて砂漠のど真ん中に不時着した。航路を外れたために救助も期待できない。食料もわずか。怪我人もいた。炎天下の中、パイロットのフランクをリーダーに決死のサバイバルが始まる。そんな中、英軍ハリス大佐が砂漠を横断して救助を呼ぼうと提言する。余りにも無謀な計画だったが、彼は引き止めるのも聞かずに仲間を連れて出て行った。一方、航空技師ドーフマンはある秘策でこの窮地を脱出することを思いつく。
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(レビュー) 砂漠に遭難した人々のサバイバルを硬派なタッチで綴ったアドベンチャー作品。
監督のR・アルドリッチは骨太な作風を信条とする作家である。本作も持ち前の男っぽい作風を前面に出しながら、個性派揃いのキャストの丁々発止なやり取りをスリリングに描いている。砂漠に閉じ込められた、いわゆるシチュエーション型のドラマであるが、場面展開の少なさといったデメリットを人間関係の面白さでグイグイと引っ張っていく。この手腕は見事である。
パイロットのフランクを演じるのはJ・スチュアート。元々端正な正義漢というイメージだが、今回は砂まみれ、埃まみれになりながら地べたに這い蹲るキャラクターとなっている。これまでに余り見られなかったキャラで新鮮だった。設定が老パイロットというところに若干の無理はあったが迫真の演技を披露している。
彼と対立していくドイツ人技師ドーフマンの冷徹さも魅力的だった。極端な話、この映画はほぼこの二人の対立ドラマと言っても良い。彼はフランクに取って代わりリーダーの座につくのだが、フランクにはない若々しさ、聡明さがある。決まった時間に決まった行動をする、いかにもドイツ人気質な理論派で、アナログ人間フランクとの対比が面白い。
そして、もう一人本作には重要なサブキャラが登場する。それはフランクとドーフマンの間を取り持つ副官ルーだ。R・アッテンボローが演じているのだが、まるで派閥争いの板ばさみにあう中間管理職のごとき悲哀を滲ませながら見事な好演を見せている。見ていて何だか気の毒なってしまうくらいであった。
他にも、個性派揃いの男優がたくさん登場してくる。E・ボーグナイン、P・フィンチ、J・ケネディ等、男臭い連中ばかりだ。階級も人種も異なる者が集い、これはさながら社会の縮図といった所だろう。こうしたアクの強い人物達が交錯することで、この映画は濃密に出来上がっている。
ただし、見てて飽きない映画ではあるのだが、リアリティ云々を言ってしまうとかなり強引な展開も見られる。ドーフマンの脱出計画は理論的には正しいのだが、果たして実際に可能なのだろうか?まぁ、そこは映画だからということで許容するしかないだろうが‥。
本作はオープニングタイトルが実に格好良い。いきなりクライマックス並みのテンションで始まりすぐにドラマに引き込まれた。尚且つ、タイトルバックで全登場人物を出して、キャラの顔と名前を簡潔に紹介している。この手際の良い演出には感心させられた。
尚、彼の息子ウィリアム・アルドリッチがこのオープニングでチラッと登場してくる。あっけなく死んでしまうので、もしかしたら身内をちょっと出したい‥という程度のゲスト出演だったのだろう。監督としては可愛い息子だが、それを呆気なく退場させてしまうあたり。職人監督に徹している。
ちなみに、彼はその後、俳優ではなくプロデューサー業に転向して、2004年に父が残したこの傑作をリメイクしている。果たしてどこまでこの男臭い作風が継承されているのだろうか。未見なので分からないが、現代ではこうしたアナクロニズム漂う作品を撮るのは中々難しかろう。洗練されすぎてしまうと、かえって元の良さが失われてしまいそうである。