斬新なアイディアが売りのサスペンス映画。
「デジャヴ」(2006米)
ジャンルサスペンス・ジャンルSF
(あらすじ) フェリーが爆発炎上し500人以上の尊い命が失われた。ATF捜査官ダグは遺留物からテロの可能性を確信する。その後、事件現場から離れた川岸でクレアという女性の死体が発見された。検死の結果、テロリストに繋がる手がかりを得るダグ。彼はその証拠を持ってFBI特別捜査班に招かれる。そして、最新テクノロジーを駆使した政府の極秘捜査システムによって犯人を追い詰めていく。
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(レビュー) 政府の秘密捜査システムは、正に驚異の一言。監視衛星で捉えた記録映像を、人間の顔の表情まで克明に再現することで、過去の情報を引き出すというものである。再現映像のカメラアングルは自由自在に動かす事が出来るし、限られたエリアならどこまでも被写体を追いかける事ができる。但し、再生できるのは4日前のものからに限る。それ以前のものは再現できない。また、リアルタイムで再生することしか出来ず、一度終わってしまえばビデオのように巻き戻しは出来ない。はっきり言って、そんなのありねぇ~と思ってしまうし、事実本作の主人公ダグもこのシステムを疑ってかかる。この“とんでも”な設定に突っ込みを入れてしまうと、この映画は全然入り込めなくなってしまうだろう。逆に、タイムトラベルを奇抜な設定で切り込んだ‥と評価できれば面白く見れる。
個人的には、SFの作り方にも色々とあるが、これはこれで中々ユニークな設定だと思った。タイムマシンに乗って時代を渡るというだけではもはや新味がない。再現映像、つまり過去の中に入って捜査を行うというのは、よく出来たアイディアだと思う。もっとも、クライマックスあたりから禁じ手のようなものが出てきて、只でさえ荒唐無稽な設定が更に突拍子もないものになってしまうのだが‥。
物語はやや一本調子ながら、クライマックスの盛り上げ方はよく考えられている。色々と不要なシーンがあり、その当たりを刈り込めば2時間以内に収まって丁度良い見易さになっただろう。また、犯人探しのサスペンス以外に、本作にはロマンスも用意されている。説得力という点では甘いが、これもクライマックスを上手く盛り上げている。この手のタイムトラベル物には付き物の“すれ違い”もあり、結構楽しめた。
監督はT・スコット。元々、映像に凝る作家だけに、今回の再現映像にもかなり面白い画作りが見られる。特に、ダグがいる現実の世界とクレアがいる映像の世界をオーバーラップで紡いでいくシーンは、まるで二人が目には見えない愛のシグナルを出し合っているかのような、そんな官能を感じられた。中盤のカーチェイスシーンも、現在に過去の映像を被せる事でスリリングさがより過激に演出されている。視覚に直感的に訴えてくるケレンミと緩急自在の編集は流石である。