アクの強い原作だが、映画のほうは意外にまともに見れてしまう。
「嗚呼!!花の応援団」(1976日)
ジャンル青春ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ) 大阪・南河内大学の応援団には、喧嘩がめっぽう強い親衛隊隊長、青田赤道がいた。長らく続く浪華大学応援団との抗争にケリをつけるべく全面戦争が始まる。しかし、敵の裏をかこうとした青田の作戦が失敗し完敗。このままでは男が廃ると、弱腰の上級生の尻を引っぱたいて再戦した。結果は、見事にリベンジを果たす。新団員富山はそんな青田を尊敬した。ある日、応援団が野球の試合の応援に借り出されることになる。ところが、喧嘩が原因で団旗持ちをするはずだった青田が停学処分を受けてしまう。富山がその代打を務めることになるのだが‥。
goo映画映画生活ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 応援団の名物男、青田花道が大暴れするギャグマンガを実写映像化した作品。尚、本作のヒットを受けて全3作品製作された。
マンガ原作の実写映像化が難しいことは、
「NANA-ナナ-」(2005日)や
「ハチミツとクローバー」(2006日)の所でも書いたとおりである。原作とのイメージにズレが生じてしまうと、どうしても作品との間に距離が出来てしまう。どんなに上手く作られていても、多少なりとも違和感は生まれるものだ。ならば、いっそのこと原作とは切り離して作ってしまえば良いのではないか?その方が観客の期待を変に裏切らない分、逆に親切なのではないか?そういう作り方もある。確かに、これはこれで利口な選択なのかもしれない。
本作は基本的には原作のエピソードを取り入れているものの、実写映像化するにあたっては必要以上にマンガ的なタッチにこだわらず、あくまで実写的演出に拠った作りになっている。したがって、マンガの面白さを期待してしまうと完全に裏切られるだろう。そこは割り切らなければならない。原作と切り離して普通の実写映画を見る感じで鑑賞すれば中々楽しめる。
本作の主人公は無理やり応援団に入団させられた新団員富山である。彼の視点で応援団に起こる様々な事件がスケッチされていく。その中で一際異彩を放つのが青田赤道である。彼の豪快なエピソードを中心にして物語は展開されていく。そして、クライマックスは一転。富山の純愛エピソードが語られる。特に捻った所はないものの、ほろ苦い青春の1ページとして順当に作られておりしみじみとさせられた。
一方で、やはり何と言っても青田の強烈な個性は作品の面白さの最大の売りである。何だかんだ言って、駅伝の応援&初恋の思い出のエピソードを描く中盤は彼が完全に主役である。富山の純愛エピソード同様、青田の初恋の思い出にもしみじみとさせられた。
尚、「クェックェッ」「ちょんわちょんわ」といったナンセンスギャグも登場してくるが、さすがにあの絵を実写で再現するのは不可能であった。この辺りは見ていて苦しいと言わざるを得ない。
しかし、当時のこの手のマンガ原作の実写化作品、例えば「ドカベン」(1977日)や「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(1977日)等に比べたら全然普通に見れる。
原作を意識せず、通常の劇映画的なスタンスで作った所が良かったのだろう。全体的にきちんとまとまっている。