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バウンティフルへの旅

しみじみとさせる小品。
「バウンティフルへの旅」(1985米)星3
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 老女キャリーは息子夫婦と暮らしている。嫁とは犬猿の仲で、稼ぎの少ない息子も嫁に頭が上がらなかった。そのため家庭の中でキャリーは孤立しがちで、彼女の思いは自ずと生まれ故郷バウンティフルへと向かった。そんなある日、キャリーはとうとう嫁の目を盗んで一人でバウンティフル行きのバスに乗り込む。そこで心の優しい娘と出会い‥。
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(レビュー)
 孤独な老女が故郷を目指して旅をするロードムービー。しっとりとした演出が貫通され、しみじみとした味わいの小品に仕上がっている。

 キャリーの故郷への郷愁は、正に老いてこそという気もするが、おそらく誰にでも起こり得る普遍的なものだと思う。この感傷は、以前このブログでも紹介したI・ベルイマン監督の「野いちご」(1957スウェーデン)でも描かれていた。主人公の老医師は終末の旅で人生を回顧する。これは、やがて訪れるであろう“死”を受け入れるための通過儀礼とも言えるし、年を重ねる事で自然と生まれる人間の“帰巣性”なのかもしれない。老いてこその心理であり、若い人もそこを想像しながら見れば、キャリーの旅先での回顧には共感できるのではないだろうか。

 印象に残るのは、キャリーを演じたジェラルディン・ペイジの演技である。映画序盤は、嫁姑の軋轢に疲弊した悲劇のヒロインとして、暗い表情を貫く。その後、家を抜け出して故郷の旅に出発すると、表情がどんどん輝いていく。特に、車中で出会った娘に自分の半生を話して聞かせるシーンなどは最高の笑顔を見せる。まるで娘時代に戻ったかのような稚気溢れる笑顔がとてもチャーミングだ。実は彼女には持病があり、そのために外出が禁止されていたのだが、それがどうだろう。この生き生きとした表情は‥。「病は気から」とはよく言ったものである。

 バス停留所で出会う娘を演じたR・デモーネイも良い役回りであった。愛くるしい表情が、ジェラルディン・ペイジの若返りを喚起するかのように瑞々しく捉えられている。

 一方、嫁の造形には物足りなさを感じた。分かりやすい悪役としてタッチングされているのだが、このレッテルにどこか安直さを覚えてしまう。彼女には彼女なりの言い分がきっとあるはずであり、そこに深く踏み込めなかったのは残念である。姑と嫁の軋轢はどこの家庭にでも少なからず存在するものであるが、それをこういう形で紋切り的に料理してしまった所に底の浅さを感じてしまった。

 尚、1か所だけどうしても気になる演出があった。それは、深夜バス内でのキャリーと娘の会話シーンである。キャリーがベラベラ喋るので周囲の迷惑にならないのか‥と気になってしまった。ちょっとした演出の問題であるが、何となく嫌な感じに写ってしまった。
[ 2011/03/13 22:59 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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