この強盗計画は斬新!
「シシリアン」(1969仏)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 警官殺しで逮捕された殺し屋サルテは、イタリアンマフィアの首領ヴィットリオの手引きで脱走に成功した。ヴィットリオは故郷シチリア島全土を掌握しようと執念を燃やしており、そのためにはどんな汚い仕事もする男だった。それを見込んでサルテはヴィットリオに宝石強奪計画を持ちかける。早速、宝石が展示される博物館に下見に行った。ところが、警備が厳重でとても強奪する事は不可能だった。そこでヴィットリオはアメリカンマフィア、トニーの助力を得て大胆な計画を打ち立てる。一方、パリ市警のル・ゴフ警部は、サルテの動向を伝ってこの計画を察知する。
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(レビュー) 宝石強奪計画を描いたギャング映画。
ヴィットリオをJ・ギャバン、サルテをA・ドロン、彼らを追うル・ゴフ警部をL・ヴァンチェラが演じている。これだけのスターが揃い踏みしたという意味では、大変豪華な作品と言える。
基本的には正調な作りのサスペンス映画だが、所々にユーモアが入っていて面白い。例えば、友情の証しとして用いられる紙幣などは、いかにもフランス映画らしい洒脱を効かせたユーモアである。また、写真家のアトリエの一件、ル・ゴフの禁煙等、殺伐としがちな中に上手いタイミングで息抜きする場面を持ってきている。こうした気配りはサービスに徹した作りとして、中々巧みだと思った。
一方で、クライマックスの大胆さには痺れさせられた。タイムリミット演出で切迫感を煽ったところも良いし、何よりこの宝石強奪計画自体が斬新で面白い。冷静に見れば到る所で無理が出てきてしまうのだが、そこはご愛嬌。全てはカタルシスを生むための荒唐無稽さ‥ということでなんだか許せてしまう。それくらい痛快だった。
ラストも冷酷非常なギャングの世界を実直に再現したという意味で、実に好感が持てる顛末だった。
一方、残念に思う箇所も幾つかある。
序盤のサルテ脱走計画はかなり強引なものに思えた。このシーンは撮り方を考えれば自然なものとして見せれる部分である。演出の手抜きでにしか見えず、作り方の甘さを露呈している。また、ラストの伏線の張り方も、もう少し周到にいかなかったか‥と残念に思う。せっかくの豪華共演&娯楽大作なわけだが、こうした作りの甘さが作品の質を落としてしまっている。
また、これはシナリオ上の不満になるが、ヴィットリオのバックボーンに深く言及できなかったのも手落ちという気がした。この計画は、そもそも彼が故郷を取り戻すという目的から始まったものである。そこにはファミリーという何物にも変え難い血縁に対するヴィットリオの深愛があったはずである。しかし、本作を見る限りそれが余り見えてこなかった。もっとそれを印象付ける工夫が必要である。
音楽はE・モリコーネ。マカロニ調なのは敢えて狙ったものなのか?多少の違和感はあるが、それゆえこのテーマソングは耳に残る。何度もリフレインされるので覚えてしまうくらいだった。