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トゥルー・グリット

14歳の少女マティのお尻ペンペンがドラマの転換点!
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「トゥルー・グリット」(2010米)星3
ジャンルアクション
(あらすじ)
 父親を殺された14歳の少女マティは、飲んだくれの粗野な保安官コグバーンに犯人チェイニーの捜索を依頼する。翌朝、二人は追跡の旅に出ることになった。しかし、コグバーンは同じくチェイニーを追跡中だったテキサス・レンジャー、ラビーフを相棒にして一足先に出発してしまう。この目で確かめるまでは故郷に帰れないと、マティは彼らの後を追いかける。こうして3人の追跡劇が始まった。その旅は想像を絶するほど過酷なものとなっていく。
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(レビュー)
 1969年にJ・ウェイン主演で製作された西部劇「勇気ある追跡」(1969米)を、異才コーエン兄弟がリメイクした作品。

 オリジナル版はコグバーンを演じたJ・ウェインがアカデミー賞主演男優賞を取ったことで有名な作品だが、正直なところそれほど凄いという作品でもなかったような気がする。確かにコグバーンとマティのユーモラスなやり取りは魅力だったが、西部劇として見た場合、決して派手な銃撃戦があるというわけでもなく、どちらかと言うとロードムービの面白さを狙ったような作品だった。復讐劇というハードなテーマを持ちながら、朴訥とした作風に終始するのも余り好みではなかった。ただ、忘れられなかったのは、コグバーンの宿敵ネッドを待ち伏せする作戦でチョイ役で登場するD・ホッパーだった。リメイク作にも登場する、ひょろっとした白人青年ムーンを演じていたのだが、これが気弱な舎弟といった頼りなさで、後年のラジカルなイメージとは余りにもかけ離れていて印象に残った。

 物語は基本的に前作の流れを踏襲した作りになっている。ただ、所々にきめ細やかな演出が挿入され、またコーエン兄弟らしいブラックな感性が添えられている。

 例えば、死体を巡る一件などは、多分オリジナル版にはなかったエピソードだったように思う。彼らの代表作「ファーゴ」(1996米)を想起させるような猟奇的悪趣味さはかなり棘があるが、人間の欲心を嘲笑するかのようなアイロニーに満ちた人間観は、いかにもコーエン兄弟らしいブラック・ユーモアである。尚、本作には同名小説の原作があるが、今回の映画化にあたってはコーエン兄弟自身が脚本を書いている。

 また、オリジナル版には無かった裏テーマのような物も感じ取れた。表のテーマは無論、表題作の訳である“勇気ある追跡”なのだが、その裏側には聖書によって裏付けされた宗教的なテーマを見る事が出来る。
 オープニングで箴言28章1節の言葉が登場してくる。「悪しきものは、追うものもないのに逃げる」これは旧約聖書の一節で、これから始まる追跡劇を端的に表した言葉である。
 その後、マティが馬に食べさせるために携帯するリンゴ、野宿には危険は付き物とコグバーンが警戒する蛇。こうした<アイテム>が、物語上欠かせぬものとして登場してくる。また、クライマックスの洞窟シーンでは、これらの<アイテム>の意味するところが強烈に印象付けられている。
 リンゴと蛇は、もちろん旧約聖書のアダムとイブの失楽園の物語に出てくるキー・アイテムである。神の国から追放された人間は争いの歴史を始めていく。これが旧約聖書の物語だ。こうした聖書的な意味を含むアイコンを鑑みると、実はこの物語も血で血を洗う「旧約聖書」のドラマと全く同じではないか‥ということに気付かされる。
 尚、「復讐するは我にあり」という言葉は新約聖書に登場してくる一節だが、これは悪しき者に対する復讐はキリスト教では禁じられた行為であるということを意味している。悪しきものを追いかけて復讐を果たそうとしたマティの顛末はどうだったろうか?決してハッピーエンドとは言い難いものである。このラストからも分かるとおり、本作は聖書に則った神話的な解釈の元で発せられた訓話‥そんな風に受け止めることも可能なのである。
 少し妄想の羽根を羽ばたかせてしまったが、こういう解釈もできるという所にこの映画の奥深さがあるように思う。

 キャストでは、マティを演じた映画初出演のヘンリー・スタインフェルドの新鮮さが魅力的だった。ベテラン俳優陣が揃う中、物語序盤はほぼ彼女が独壇場の活躍を見せいている。勝気な性格と“したたかさ”を併せ持ったスーパー少女で、例えば質屋の主人から金を引き出そうと駆け引きに転じる所などは大人顔負けである。何事にも物怖じしない姿が凛としていて実に良かった。
 しかし、そんな彼女もひとたび厳しい大自然の中に放り出されれば年相応の子供に戻っていく。旅を描く中盤以降は、コグバーン達の後方に隠れながら過酷な現実を目の当たりにして恐々とし、その姿も愛らしくて良かった。
[ 2011/03/30 21:26 ] ジャンルアクション | TB(0) | CM(0)

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