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ザ・ファイター

C・ベールの熱演が素晴らしい。
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「ザ・ファイター」(2010米)star4.gif
ジャンル人間ドラマ・ジャンルスポーツ
(あらすじ)
 マサチューセッツ州の小さな町。そこに連敗中のボクサー、ミッキーがいた。元ボクサーの兄ディッキーと、マネージャーをしている母アリスの元で、彼は日夜練習に励んでいた。今度の対戦相手は格下である。次こそは‥と意気込んで臨んだ試合だったが、直前になって対戦相手が急遽交代することになる。困惑するミッキーをよそに、ファイトマネー欲しさにディッキーとアリスは強引なマッチメイクを組んだ。結果は惨敗だった。惨めな敗北を味わったミッキーはボクシングの道を諦めかける。そんな彼に恋人シャーリーンは再起を促した。そのためには今の家族と離れなければならないと、彼女は言うのだが‥。
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(レビュー)
 実在のボクサー、ミッキー・ウォードの伝記映画。
 一応ボクシング映画ではあるが、主たるテーマはミッキーと家族の愛憎ドラマである。ヘビーな人間ドラマとして中々面白く見れた。

 兄ディッキーは、かつて町の英雄として活躍したボクサーである。しかし、今はすっかり場末のジャンキーに落ちぶれている。彼はミッキーのトレーナー役を買って出るが、スパーリングに遅刻するわ、試合をすっぽかしそうになるわで、足を引っ張ってばかりいる。ミッキーはそんな兄を嫌悪しつつも、血縁という呪縛に捕らわれている。
 一方、9人もの子供を抱えながらマネージャーをする母アリス。こちらもファイトマネーが欲しいために無茶な試合を組んで、ミッキーのボクサーとしての才能を潰しそうになる。
 ミッキーは彼らに苦しめられながら、家族か、我が道かという葛藤を募らせていく‥というのが、この映画の主たるテーマである。

 尚、本作は製作に到るまでにかなり紆余曲折があったと言われている。企画自体は随分前からあり、その間に監督、シナリオライターの交代が幾度もあった。今回D・アロノフスキーが製作総指揮に名を連ねているのは、当初彼が監督を務めるはずだったからである。そういう目で見てしまうというのもあるが、リライトを重ねたシナリオはいささかまとまりに欠くような気がした。

 問題は、ミッキーとディッキーの両方の葛藤に均等に踏み込んでしまったところにあるように思う。一体どちらを描きたいのか?どうにも集中力が削がれるドラマになっている。ミッキーの上昇志向のドラマの傍らで、映画は愚兄ディッキーのもがき苦しむドラマも描いていく。このバランスが悪い。おそらく兄弟愛を描こうとしたのだろうが、あくまで主人公はミッキーにある。ミッキーをメインのドラマに据えながら、その上でディッキーの葛藤をリンクさせるというスタンスで構成すれば、もっと見やすい映画になったのではないだろうか。後半に行くにつれディッキーの視座が強まっていくため、ストーリーの力強さが失われてしまっている。

 それでも後半、兄弟が寄りを戻すあたりは結構な“泣き所”だった。過酷な現実を突きつけられることで再生の道を歩み始めるディッキーと、徐々にボクサーとしてスポットライトを浴びていくようになるミッキー。二人のドラマが一つの鞘に収まり上昇志向に転じていく展開は中々熱い。

 監督はデヴィッド・O・ラッセル。以前紹介した「スリー・キングス」(1999米)の所でも書いたが、彼の持ち味は毒が効いた風刺にあると思う。どちらかと言うと喜劇の異才という印象が強い作家であるが、それが今回このようなシリアス・ドラマを撮ったという事は意外であった。実話を元にした伝記映画ということもあり、彼の特色はほぼ見られず、独特のリズムに乗って繰り出されるアッパーな演出も封印している。先述の通り、本作は二転三転した企画なので、最後の監督候補として彼にオファーが来たという風にも考えられる。その経緯を考えれば、彼本来の持ち味が見られないのは、仕方がないことなのかもしれない。ただ、この新境地が今後の創作スタイルにどういう変化を及ぼしていくかは少し楽しみである。個人的にはこの監督には“食わせ物”の作家でいて欲しいという気もするが、本作でオスカーの注目を浴びたことであるし次回作が気になる。

 キャストは夫々に文句のつけようがない。特に、ディッキーを演じたC・ベイルが素晴らしい。体重を大幅に落とし、更に歯と頭髪を抜いてルーザーの風貌を完璧に作り上げている。サイコ・スリラー「マシニスト」(2004米)ですでに限界ギリギリの超減量に挑んでいるベイルだが、作品ごとに体型をここまで変えられるとは‥。正に役者魂を見る思いである。
[ 2011/04/01 01:53 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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