C・イーストウッド&S・マクレーンの絡みが魅せる。
「真昼の死闘」(1970日)
ジャンルアクション
(あらすじ) 流れ者のガンマン、ホーガンは、荒野で盗賊に襲われる女性を救った。彼女はサラという尼僧だった。駐留するフランス軍に英語を教えいていたのだが、市民を不当に抑圧する彼らに反発して逃げ出してきたのである。ホーガンは彼女を守りながら、報酬欲しさにゲリラ活動に協力するようになる。二人は早速、軍の武器を積んだ列車を襲撃することになるが‥。
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(レビュー) 凄腕ガンマンと尼僧が革命軍の戦いに参加していく痛快西部劇。
監督はD・シーゲル。ホーガン役はC・イーストウッド。このコンビは翌年に傑作「ダーティーハリー」(1971米)を撮っており、どうしても本作はその影に隠れがちである。しかし、この西部劇はイーストウッドの元々持っていたキャラクター性、マカロニウェスタンで培われたアンチヒーロー性をダイレクトに反映しており、アメリカ凱旋の雄姿を拝めるという意味では興味深い作品である。尚、二人は1968年に「マンハッタン無宿」(1968米)を撮っており、ハリー・キャラハンの原型はそちらの方に見る事が出来よう。
イーストウッドのワイルドな佇まいは魅力であるが、もう一方の主役サラを演じたS・マクレーンも見応えがある。コメディエンヌの本領を発揮しながらイーストウッドとのやり取りを飽きなく見せる。
ホーガンは殺伐とした世界に身を置く賞金稼ぎ、一方のサラは神に仕える聖女である。面白いのは、サラがホーガンと一緒に旅をする中でどんどん聖女性を失っていくことだ。例えば、陰に隠れてタバコを吸ったり、祈る振りをして他人を騙したり、ついには酒をラッパ飲みする始末である。お姫様と従僕のようだったが関係が、徐々にバディの関係に変わり、列車爆破のシーン以降は母親と息子のような関係、そして最後には男女の関係に転じていく。この変遷がドラマを面白く見せている。
ちなみに、川辺の手当てのシーンはやたらとねちっこく描かれている。ここはホーガンがかなり切羽詰った状況に追い込まれており、それだけにスリリングに見れるのだが、同時にサラの行動にも注目したい。これは二人の絆を確固たるものとして決定付けるものであり、後のドラマをスムースに運ぶ上でかなり重要なシーンとなっている。したがって、ここをじっくりと描いたD・シーゲルの演出は実に弁えていると言っていいだろう。
尚、サラの尼僧という設定を鑑みれば、ここにキリストの奇跡を見ることも可能である。ただ、おそらくD・シーゲルの中にそこまでの信心深さは無かろう。あくまでドラマの演出上のこだわりなのだと思う。
クライマックスには派手な銃撃戦が登場してくる。しかし、アクション演出が得意なシーゲルの割には今ひとつ切れが感じられなかった。ダイナマイトを使った大掛かりなドンパチは良いのだが、いかんせんシーンが分散気味で迫力が余り感じられない。戦闘に参加する個々の顔を前もって明確に抑えておく必要もあったと思う。
自然を捉えたカメラは美しく◎。特にオープニングシーンが秀逸である。実は、ここには後のドラマに繋がる伏線が幾つか登場してくる。周到に計算されており感心させられた。画面の端々を注意して見ておきたい。