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ウンタマギルー

御伽話を見る感じで鑑賞すれば中々面白い。
ウンタマギルー [VHS]ウンタマギルー [VHS]
(1990/06/21)
小林薫、戸川純 他

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「ウンタマギルー」(1989日)星3
ジャンルファンタジー・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 日本返還直前の沖縄。サトウキビしぼりをしているギルーは、過食症の母親と娼婦の妹と暮らしている。満月の晩、ギルーは仕事場の親方の娘マレーと関係を持った。その直後、不思議なことにマレーの草履がひとりでに宙を飛んでいった。追いかけていった先でギルーは、木の精霊キジムナーの子供が溺れているのを目撃する。それを助けたギルーは草履を拾って元の場所に戻った。しかし、すでにそこにマレーの姿はなかった。翌朝、ギルーが仕事場に行くと、親方が飼育豚を手当てしていた。その豚は足を怪我していて‥。
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(レビュー)
 沖縄を舞台にしたシュールでファンタジックな御伽話。

 豚の化身と交わった青年の数奇な運命を、当時の社会背景を交えて描いている。監督・脚本の高嶺剛は沖縄出身の作家で、主に沖縄を舞台に作品を撮っているということだ。地元を知り尽くすだけに、現地の風土や音楽が活き活きと再現されており、それがこの作品の大きな魅力に繋がっている。

 ただ、余りにも突拍子も無い話であることは確かである。この「ウンタマギルー」は沖縄で古くから言い伝えられている民話ということで、基本的にリアルな沖縄を描いているわけではない。人によっては入り込みづらい作品かもしれないが、そこは“沖縄版ロビン・フッド”というような感じでとらえれば面白く見れるかもしれない。

 何と言っても本作の最大の魅力は、沖縄の風土がよく伝わってくるところだ。沖縄方言は理解しずらいところがあり、この映画では全てのセリフに字幕がついている。それだけに映画全体から沖縄らしさというものが感じられる。また、随所で披露される沖縄民謡も独特の世界に浸からせてくれる。

 物語の方は非常にシンプルで朴訥としたものである。基本的にコメディ的な要素が多く楽しく見れた。
 ただ、時代背景を返還直前に設定した所には、明らかに製作サイドのシリアスな“狙い”が感じられる。戦争の傷痕に苦しめられる沖縄の人々の姿‥それを描こうとしたことは間違いない。米軍基地問題で揺れる昨今の事情を見ても、これは沖縄という土地に永遠について回る問題なのかもしれない。色々と考えさせられた。

 とはいえ、本作は元々が民話であり、いかんせん寓話色が強すぎる。そのため、果たしてどこまでこの社会的なメッセージが観客に伝わるかは疑問‥という気がした。劇中でギルーが、「日本でもアメリカでもない、俺達は琉球王国だ」と叫ぶが、おそらくここにメッセージが集約されているような気がした。しかし、その他に明確な形で政治的な発言が登場することはほとんどなく、社会的なメッセージを発する作品としては押しが弱い感じがした。やはり沖縄伝承の御伽話というスタンスで見るのが妥当であり、政治的なメッセージはこの場合かえって不要、もしくは作品のテーマを中途半端にしてしまっているのではないか‥という気がした。

 映像はとにかく美しい。我々が失いかけている自然に対する畏敬の念と、実は人は自然によって生かされているという自然崇拝。この二つがとめどなく画面から溢れ出しており、このあたりの映像は沖縄にこだわりを持つ監督の“仕事”という感じがした。

 キャストではギルーの妹を演じた戸川純が印象に残った。動物占いにのめり込む娼婦という役所を、独特の浮遊感を漂わせながら好演している。もちろん歌も披露している。

 余談だが、キジムナーの踊りには驚愕した。これではちょっとした曲芸師のようではないか?しかも中年のオッサンである。キジムナーというと子供というイメージがあったので何だか意外であった。
[ 2011/04/17 19:15 ] ジャンルファンタジー | TB(0) | CM(0)

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