fc2ブログ










KAMIKAZE TAXI

友情ドラマ、アクション、社会派、色々詰まった娯楽作品。
KAMIKAZE TAXI~ディレクターズカット版~ [VHS]KAMIKAZE TAXI~ディレクターズカット版~ [VHS]
(1995/12/16)
役所広司

商品詳細を見る

「KAMIKAZE TAXI」(1995日)星3
ジャンル人間ドラマ・ジャンルアクション
(あらすじ)
 チンピラ達男は組長・亜仁丸の命令で、政治家・土門の愛人の世話を任されることになった。その後、土門の過ちで達男は付き合っていた恋人を失う。彼は復讐心から若い仲間と一緒に土門邸に押し入って隠し金を強奪した。しかし、そこを亜仁丸に見つかり達男は追われる身となる。その逃走中、彼は日系ペルー人のタクシー運転手、寒竹と出会う。達男は彼のタクシーに乗って逃亡の旅に出るのだが‥。
goo映画

ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!

FC2ブログランキング
にほんブログ村 映画ブログへ人気ブログランキングへ


(レビュー)
 組から追われるヤクザ青年と日系ペルー人のタクシー運転手の奇妙な友情を描いたヤクザ映画。
 元々2本のVシネで製作されたものを1本にまとめて劇場公開した作品である。豪華なキャスト、映像の作り込み等、余り安っぽさを感じさせない。これなら劇場用映画として公開しても納得という気がした。

 物語は、ヤクザ青年・達男が日系ペルー人・寒竹のタクシーに乗って組織と対決していくロードムービ形式で進行する。コミカルなタッチが加味されることで、さほど重苦しさは感じられない。Vシネという性格上、どちらかと言うと気楽に見れるタイプの作品になっているということもあるが、作品全体が軽妙にまとまっていると思った。
 何と言っても、亜仁丸を演じたミッキー・カーティスのライトな存在が良い。まったくもって人望のかけらもない情け無いヤクザなのだが、これをミッキー・カーティスがコミカルに演じている。ハードボイルドとコミカルの折衷には北野武映画に出てくるヤクザのようなテイストも感じられる。この亜仁丸というヤクザは非常に面白かった。

 映画は追跡劇の中に達男と寒竹の交友を描いている。2時間半を超える長さながら飽きなく見れたのはこれがあるからで、チンピラと移民という異色の組み合わせが大変面白い。彼らは社会から疎外される者同士、奇妙な友情で結ばれていく。この映画は達男の視座で進行するため、寒竹の感情が今ひとつ見えてこないという難があるが、二人の間で交わされる微妙な感情のせめぎ合いは丁寧に描写されており面白く追いかける事が出来た。

 展開も軽快で飽きさせない。但し、途中の自己啓発セミナーは冗漫に映った。ドラマの箸休めと解釈しても、ここは少し悪ふざけが過ぎる。丸ごとカットしても以後のドラマにさして影響がない部分であり、もっと短く編集しても良かったと思う。

 また、本作は寒竹の苦悩に迫ることで、移民問題についても深く言及している。ストレートなヤクザ映画にはない社会派的な“歯ごたえ”が感じられ、大変見応えがあった。

 さらに、タイトルにもなっている“神風”だが、これもヤクザ映画らしからぬユニークなフレーズである。ここでの“神風”とは太平洋戦争時の日本軍の神風特攻のことを指している。ヤクザ用語に“鉄砲玉”という言葉があるが、それに近いニュアンスかもしれない。戦争を知らない若い達男に神風特攻の精神が理解しうるか?という疑問は残るが、一方で寒竹のバックストーリーにこのモティーフを絡ませたことはかなり面白い着想である。

 後半で寒竹が自分の生い立ちを達男に語るシーンがある。そこで彼はペルーの過去の内乱の悲劇を静々と悔恨する。日本人でありながら日本人ではない自分。アイデンティティーを模索する我が身を顧みながら、神風の精神を“持たざる者”としての自省を吐露していくのだ。これは“神風”の精神、言い換えれば日本人としての精神はいずこへ?という憂いにも聞こえてくる。
 開国以来150年という歴史を通して新たに見え始めてきた移民問題。日本がいずれ“神風”を持たざる日本になってしまうのではないか?という未来を、移民である寒竹の口から語らせたところにアイロニーが感じられる。

 このシーンを受け継いで描かれるクライマックス・シーンも実にユニークだった。劇中で寒竹は時々“アンデスの風”の話をするが、それを具現化したことで日本人の“神風”へのアンサーと俺は捉えた。ややスピリチュアルな方向になびいてしまったが、このオチは予想外だった。

 寒竹役は役所広司。あやふやな日本語を喋りながらこの難役を飄々と演じている。すでにこれだけの俳優になると、どうしても役柄よりも俳優としての顔の方が前面に立ってしまうものである。今回もそうした素の顔が少々邪魔になってしまう部分があったが、ではこの日系二世を彼以外に演じれる者がいるか?と考えてみると中々思い浮かばない。そういう意味では健闘していると思った。
[ 2011/04/19 01:00 ] ジャンルアクション | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://arino2.blog31.fc2.com/tb.php/751-89980022