ブロンソンの代表作!
「狼よさらば」(1974米)
ジャンルアクション
(あらすじ) ポールは妻と娘夫婦と幸せな暮らしを送っていた。ある日、その幸せが街のチンピラに突然奪われてしまう。妻を殺され、娘を精神病院送りにされてしまったのだ。警察には任せておけない‥。ポールは敢然と立ち上がる。会社に内緒で出張先で拳銃を仕入れた彼は、それで街のチンピラを次々と撃ち殺していく。
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(レビュー) C・ブロンソンが主演する人気シリーズ“デス・ウィッシュ”シリーズの第1作。ブロンソン演じるポールの復讐をハードなバイオレンスで綴ったアクション作品である。全編彼が出ずっぱりであり、ファンならおさえておきたい1本だろう。
演出は非常に明快で、オープニングからすんなり入り込めた。真面目な小市民ポールが復讐の鬼と化していく過程も軽快に描かれていて最後まで飽きなく見れた。
ただ、斜に観た場合、彼の復讐劇の裏側にはアメリカの銃社会を“是”とするプロパガンダ臭が嗅ぎ取れなくもない。
ご存知のようにアメリカでは、あれだけ銃による犯罪が発生しているというのに銃の所有が許されている。その根底には、開拓史時代から連綿と続く自己防衛というロジックが存在している。このあたりの事は、M・ムーア監督の「ボウリング・フォー・コロンバイン」(2002カナダ米)で詳しく解説されている。本作のポールの復讐行為も、正にこのロジックを後ろ盾にした報復である。そこに若干の怖さを感じてしまった。
彼が銃を手に入れるアリゾナという土地。これも中々興味深い舞台に思えた。知っている人もいるかもしれないが、アリゾナは西部劇の舞台として有名な土地である。そして、そこには必ずヒーローがいた。「駅馬車」(1939米)のJ・ウェイン、「アウトロー」(1976米)のC・イーストウッド等、彼らは華麗な銃裁きで悪漢達を倒していく。ポールが辿る足跡は、正にこれら西部劇のヒーローと重ねて見る事も出来る。つまり、この映画は完全にポールの復讐を擁護する立場で、彼を勧善懲悪なヒーローとして描いているのだ。その証拠に、劇中ではマスコミや大衆が彼を“アマチュア刑事”と賞賛している。また、彼の活躍によって犯罪件数も激減したと喜んでいる。こうした都合の良い所だけを抜き出して描いているが、実際には彼がやっていることも犯罪なのである。したがって、銃社会を黙認する映画‥と言われても仕方がないような作品である。
ただ、本作の見所は何と言っても先述したようにC・ブロンソンの渋さ、格好よさであり、それに浸りたいというのであれば娯楽作品としては十分楽しめる作品になっている。
また、彼は決して完全無敵のスーパーヒーローというわけではない。元々は一人の名もなき小市民であり、人間臭い部分もきちんと持っている。そこを丁寧に描いたシナリオには好感が持てた。
例えば、兵役拒否という経歴や、初めて人を撃った時に手が震えてトイレで嘔吐をするとかetc.何も彼は喜んで復讐をしているわけではないのである。元々争いとは無縁の男であり、仕方なく復讐の鬼になったわけで、そこには一定の共感も覚える。