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風花

孤独な男女のロードムービー。しみじみとさせられる。
風花 kaza-hana [DVD]風花 kaza-hana [DVD]
(2001/08/24)
小泉今日子、浅野忠信 他

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「風花」(2000日)star4.gif
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 桜の木の下で、エリート官僚・廉司と風俗嬢のゆり子が寝転がっていた。二人は夜通し飲んで酔い潰れてしまったのである。ゆり子は今の暮らしが嫌になり、北海道にいる娘に会いたがっていた。不祥事で休職になった廉司は、その願いを叶えるべく旅に付き合うことにする。
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(レビュー)
 孤独なエリート官僚とシングルマザーの触れ合いをしみじみと描いたロード・ムービー。

 映画は桜の木の下で二人が寝転んでいるシーンから始まる。二人は何者なのか?どうしてこうなったのか?それが過去のフラッシュバックと二人の会話から明らかにされていく。中々ミステリアスな幕開けで引き込まれる。良い映画はやはりオープニングから意外性に富んでいて面白い。

 廉司は失職したばかりの官僚である。ゆり子は風俗嬢をしている。二人は数奇な運命によって出会い、ゆり子の娘に会うために旅を始めることになる。二人の関係は恋人というよりも友情に近く、更に言えば母子関係のようにも見えてくる。

 廉司は普段はパリッとしたスーツで口ごもった喋り方をするのだが、酔うとだらしなくなり自分の思っている事を赤裸々に喋りだす。その口から出てくるのは、失恋、インポ、失業といったネガティブな言葉ばかりだ。どうでもいい酔っ払いの愚痴に過ぎないが、一方でまるで駄々っ子の泣き言のようにも聞こえてくる。彼は酔った時に本性を、つまりの幼稚性を表わすのだ。

 一方のゆり子は、亡き夫が作った借金を抱えながら、離れて暮らす子供のために裸一貫で頑張っている女性である。苦労を苦労と見せない明るい振舞いに彼女の気丈さ、母親としての強さが伺えるが、今に到って心労が極まり故郷の北海道へ戻ろうとしている。

 廉司は大人になりきれない未熟な男、ゆり子は苦労を背負うシングルマザー、二人の関係は疑似的な母子関係のように見えてくるのが面白い。現に、ゆり子は酔った廉司をまるで子供をあやすようにからかうし、廉司もそれに怒りながらついつい甘えてしまう。何の事はないバカップルの馴れ合いと言えば確かにそうなのだが、これが不思議と嫌じゃなく、終始微笑ましく見れた。

 しかし、たとえ二人の関係が母子関係に近いものだとしても、やはり肉体的には成人した男と女である。一緒に旅をしていれば、当然性的衝動も湧きおこる。その衝動を最も正面から描いたのが後半の旅館のシーンだろう。ここは面白く見れた。男にとっての理想の女性が往々にして母親に近いところに落ち着く‥というマザコン男の習性が垣間見れるからだ。擬似近親相姦的なブラックなユーモアと決して成就することのない悲恋の切なさ。それが合わさることで何とも感動的である。

 また、二人の関係の優劣が最終的に逆転してしまう所も面白い。先の擬似母子関係になぞらえて考えれば、ゆり子が保護者で、廉司がその保護を受ける被保護者というふうに捉えられる。しかし、この保護と被保護の立場がクライマックスでは逆転する。廉司がゆり子を支える“子”たらんとすることで、相互補助の関係が築かれ二人は完成された擬似母子の関係に到達するのだ。ここにも感動させられた。
 そして、この完全に確立された擬似親子愛は、ラストのゆり子の娘への真性の親子愛へと継承されていく。ここまでしたたかにして見事な幕引きをされると感極まってしまう。実にロジカルに組み立てられた脚本だと感心させられた。

 監督は相米慎二。本作は彼の遺作となる。氏の持ち味であるロングテイクは健在で、特に冒頭のシーンの美しさは特筆すべきものがある。また、ロード・ムービーらしいロケーションを活かした撮影も、内省的なドラマを暗くならないように上手く料理していると思った。
 クローズアップの少なさも氏の演出の特徴である。例えば、ゆり子の財布に入った子供の写真をクローズアップで捉えなかったのは、明らかに狙いであろう。それによってどんな写真なのか色々と想像を掻き立てられ、その後の展開も期待させる。また、写真とリンクさせながら締めくくられるラストにも深い味わいがもたらされる。描くべきところと描かないところを弁えた所に、ベテランならではの手練が感じられた。

 廉司を演じるのは浅野忠信。ゆり子を演じるのは小泉今日子。夫々好演していると思った。
 浅野の演技力はもはや未知数という感じだが、独特の雰囲気を持った個性派俳優である事は間違いない。特に、こうした煮え切らない男をやらせると実によくはまる。
 小泉今日子については、クライマックスの不思議な体操(笑)を除けば概ね◎。不幸の身を飄々と演じているところに好感が持てた。
[ 2011/05/13 01:28 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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