こんなに怖いバレエ映画が、かつてあっただろうか!
「ブラック・スワン」(2010米)
ジャンルホラー
(あらすじ) ニューヨークのバレエ・カンパニーに所属するニナは、元バレリーナの母とバレエ一筋の人生を送っていた。このたび「白鳥の湖」のオーディションを受けることになる。今度の白鳥は新解釈の元で黒鳥も演じなければならなかった。ニナは官能的な黒鳥の踊りを体得できず苦悩する。やがて、彼女の前にライバル、リリーが現れた。こうしてニナは徐々に精神的に追い詰められていくようになる。
goo映画映画生活ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) 新プリマの座を目指すバレリーナの不安と葛藤をダークに綴ったサイコ・ホラー。
監督は鬼才D・アロノフスキー。前作
「レスラー」(2008米)で正統派ヒューマンドラマを撮った彼が、彼の原点であるホラー、サスペンス・ジャンルに戻っての今作である。色々と物議を醸す部分もあるが、彼の作家としての資質がダイレクトに反映されていると言う意味では見応えのある作品に仕上がっている。人間の心の奥底に眠る“闇”にジワリジワリと迫っていくドラマは、「π」(1997米)や「レクイエム・フォー・ドリーム」(2000米)といった初期作品を髣髴とさせ、ナイフのように切れ味鋭い神経症的なカッティングで畳み掛けるクライマックスなどは、正にアロノフスキー節炸裂と言った感じである。
ただ、主人公が精神崩壊するくらい追い込まれていく先述の初期時代の作品に比べるとパワー不足な感じは否めない。バレエという極めて芸術性の高い題材をモティーフにしているので、監督の中でもどこかで遠慮してしまったところがあるのかもしれない。例えば、「レクイエム・フォー・ドリーム」におけるJ・コネリーの崩壊振りといったら、ほとんど狂気の極地であった。今回はそこまでの狂気は見られず、美しくまとめることでドラマの座りを良くしている。そのことによって作品としてのパンチはやや欠けてしまったという印象である。
とはいえ、ニナを演じたN・ポートマンの奮起は本作の大きな見所だと思う。元々ダンス・スクールでスカウトされて女優になったそうであるが、それを鑑みれば今回のプリマドンナへの飽くなき執念には並々ならぬリアリティが感じられた。また、体を張った演技も素晴らしい。本作でオスカー主演女優賞に輝いたのも納得の熱演である。ただし、当然のことながら、あくまで“バレリーナ役”という範囲に限定される。彼女の演技は本格的なバレエ映画と比較するべきものではない。
ニナとリリーのコントラストも上手くドラマを転がしている。ニナはバレエ以外の事は何も知らないで育てられてきた、言わば籠の中の鳥である。一方のリリーは詳細なバックストーリーは分からないが、その行動から正反対の人生を歩んできた事は容易に想像できる。彼女はニナには無い魔性、奔放さを持っている。このドラマはリリーというキーマンがあって初めて成り立つドラマであり、彼女の存在がニナの葛藤、焦燥、困惑を盛り上げる原動力になっている。したがって、本作における彼女の存在意義は大きい。演じるミラ・クニスは先日見た
「寝取られ男のラブバカンス」(2008米)にも出演していたが、申し訳ないがその時にはまったく印象に残らなかった。今回は実に印象に残る立ち回りを見せてくれる。
また、ニナを精神的に追い詰めていくもう一人のキャラクターとして、母親の存在も忘れてはならないだろう。こちらはベテラン、B・ハーシーが演じている。怪しい雰囲気をまといながら見事な好演を見せてくれる。
尚、過去のプリマ役としてW・ライダーが登場してきて驚いた。アロノフスキーはE・バンスティンやM・ローク、M・トメイ等、過去に一花咲かせた俳優を起用することがよくある。かつてのアイドル女優をこんな姿にしてしまうとは‥。ちょっと見ていて痛々しかった。
映像も独特で面白い。少しざらついた特殊な画面になっているが、これがエッジの効いたドラマに実にマッチしている。撮影監督のM・リバティークは、アロノフスキーとのコンビでは先述の「π」「レクイエム・フォー・ドリーム」を含め、今回で4度目となる。こうした粒子の粗い映像を好んで使用している点では共通している。これまでは技巧派カメラマンという印象を持っていたが、今回は踊る被写体を粘着的に追いかけるような生々しいショットも見られ、地味ながら肉体美の表象であるバレエの魅力を適確に掬い取っている。
また、鏡を使った幻惑的な演出にも彼の撮影は一役買っている。鏡の中の被写体は正反対に写るわけで、イマジナリー・ラインのマジックとでも言うべき面白い映像が散見できる。
尚、今回の映画ほど鏡をキーアイテムとして頻繁に登場させている映画もそうそうないだろう。鏡は時に本性を、願望を、虚像を見せたりする。この使い方も注目に値する。
おはようございます、ありのさん。僕はこの作品をユナイテッドシネマとしまえんで、あの話題作である「パイレーツオブカリビアン~生命(いのち)の泉imax日本語字幕版」と一緒に見たのですが、まず、最初にあげられるのはナタリー・ポートマンさんの迫力の演技とわきを固めるライバル役のミラ・クニスさん、ヴァンサン・カッセルさん、ウィノナ・ライダーさん、バーバラ・ハーシーさんの演技良かった。とにかく心臓ドキドキものの場面がいくつかあって、母親の書いた絵が突然「ニナ、ニナ、ニナ・・・・」としゃべりだしたり、ニナさんが乗ってる電車の中である老人が猥褻なしぐさをしたり、他にも背筋が凍るような場面がたくさんあってあまり言えないのですが、僕にとってこの1時間50分間は恐怖の体験として記憶に残るでしょう。あと、パンフレットにはバレエダンサ-の首藤 康之さんのインタビューも載っていますのでぜひご覧ください。
こんばんは、にょろ~ん。さん。
個人的にはB・ハーシーが一番怪しくて怖かったです。連想したのは「サスペリア」でヒロインが通うバレエ学校の院長先生でした。コレもかなり怖い映画でした。
コメントの投稿