アメリカでは放映出来なかった衝撃作!
「インプリント~ぼっけぇ、きょうてえ~」(2005米)
ジャンルホラー
(あらすじ) 川の中島に建つ遊郭に一人のアメリカ人がやって来た。彼はかつて愛した小桃を探すうちに顔の醜い一人の遊女と出会う。彼女から小桃にまつわる恐るべき事実を聞かされる。
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(レビュー) アメリカのケーブルテレビ局が企画製作したオムニバス・ホラー・シリーズの1編。世界各国のホラー監督達が一堂の集結したプロジェクトで、日本からは三池崇史が参加して本作を撮った。しかしながら、過激な描写のせいでアメリカでは放映を断念したそうである。内容を見ればそれも納得という感じがした。確かに堕胎などは宗教的に問題があり、向こうで放映するには不適切な感じがした。
60分強程度の短編なので内容は実にシンプルである。物語は主人公のアメリカ人が不気味な遊女から小桃の過去を聞かされる‥という構成になっている。
その話の中で繰り広げられる惨劇は、ドラマの凡庸さを補って余りあるほどの過激な内容でかなり見応えがあった。決して怖いというわけではないが、心臓に余り良くない。三池監督は過激なビジュアルにこだわりを持つ作家なので、ここで見られる肉体嗜虐や、生命に対する酷薄な行為は、さもありなんという感じがする。人間の残酷さという、ある意味でホラー映画における肝となる部分もストレートに発せられており、それはもう直視するのをためらうほどだった。
キャストでは、遊女役を演じた工藤夕貴の熱演が印象に残った。顔の半分に特殊メイクを施し、クライマックスではおぞましい変態を見せる。物語の舞台は古い日本の小村だが、アメリカ製作ということもありセリフは全編英語である。工藤はハリウッドでも活動しているので英語は中々流暢である。
尚、本作には原作があり、タイトルの“ぼっけぇ、きょうてえ(とても怖い)”という言葉は岡山の方言だそうである。奇妙な響きで惹き付けられる。アメリカ資本で製作された作品だが、こうした題材選びを含め、今作は実質的には日本人のスタッフによって作られた作品である。
ただ、こうした日本の地方に伝わる風俗はアメリカ人には中々理解し難いものがあるだろう。それを知ってか、脚本の天願大介はアメリカ人が見ても分かるように、地方風俗を作品世界からごっそり取り除いてしまっている。彼らが日本に対して抱くイメージ、侍、芸者といったアイコンを明快に差し出す事で、物語に入り込みやすくしている。しかしながら、これによって作品世界がステロタイプにしてしまったことは否めない。閉塞的な地方の因習体質という、この物語が本来持っていたであろう怪しさが無くなってしまったのは、日本人としては少し物足りなく感じた。
ただ、シンプルなストーリーの中に二転三転するプロットが無理なく詰め込まれていた点は評価できると思う。最後まで飽きなく見れた。彼は
「十三人の刺客」(2010日)の脚本も書いているが、三池監督との相性は合っているように思う。三池監督は時々悪乗りをして突っ走ってしまうところがあるが、それを彼のシナリオが抑制している。