アイディアは評価したい。
「犯人に告ぐ」(2007日)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 児童誘拐事件を担当した巻島刑事は、捜査の失敗から地方の警察署に左遷される。それから6年後、彼はかつての上司曾根に呼ばれて、再び連続児童殺害事件を担当することになった。まず巻島に命じられたのは、報道番組に出て犯人に挑戦状を叩き付けるというものだった。これは曾根が考えたアイディアで、その思惑通り犯人から手紙と言う形でリアクションが返ってきた。以後もこの“劇場型捜査”は続き、巻島はマスコミに大きく取り上げられ一躍時の人とになっていく。それを面白く思わなかったのが、キャリア警視植草だった。彼は、大学時代の友人で他社のテレビ局のニュースキャスターをしている杉村にコンタクトを取り、巻島を破滅に追い込もうとする。
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(レビュー) 連続児童殺害事件を追う警視の活躍を描いたサスペンス作品。
物語自体はどんでん返しも含めよく考えられていると思った。“劇場型捜査”というアイディアも斬新で面白い。リアリティ云々を言ってしまうと流石に無理があるが、作り物としてはこのくらい大胆なアイディアはあっても良いのではないだろうか。第一マスコミを利用した捜査というのは、ここまであからさまな形ではなくとも、現実には色々とある。その派生として捉えれば、テレビ番組に捜査責任者が出演して犯人を挑発するというのも”あり”と捉えた。
物語は6年前の誘拐事件から始まる。冒頭から緊張感のある捜査シーンで画面に引き込まれた。この事件が巻島のトラウマとなり、以後の彼の葛藤の起点となる。
その後、彼は別の連続児童殺害事件の捜査を担当することになる。彼はここで6年前の失敗を繰り返さないように全精力を傾けていくのだが、そこには様々な障害が立ちはだかることになる。一番の天敵となるのはキャリア警視植草だ。警察内部のゴタゴタが捜査の足を引っ張る事で、巻島の立場は窮地に追い込まれていく。その一方で、彼はブラウン管の向こう側にいる誘拐犯とも戦わなければならない。基本的に、このドラマはこの二つを軸に展開されている。
ただ、誘拐事件そのものは面白く見れるのだが、警察内部のゴタゴタについては演出が悪いせいで少し野暮ったく写った。例えば、植草と女性キャスター杉村のやり取りは、同じシチュエーションの反復で変化に乏しい。杉村のアパートまで植草が乗り込んでいくなど、色々とやりようはあったと思う。植草にとってもこれは後が無い戦いだ。その切迫感をもっと強く出して欲しかった。
他に、細かな点で不満に思ったところが幾つかあった。記者会見の席で携帯電話に出るのはいかがなものか、クライマックスの子供のリアクションが弱い、ラストの病室には子供もいた方が良いetc.
聞けば本作は、WOWWOWが製作した映画らしく、テレビで先行放映した作品だそうである。それを知ると、改めて予算と時間を余りかけられないテレビ向きな作品だったのかな‥という印象になってしまう。
第一にロケーションのスケール感の乏しさは致命的で、決してスクリーン向きに作られているとは言い難い。構図にも奥行きがなく全体的にのっぺりとした画面が続く。
また、日本全土を震撼させるような前代未聞の“劇場型捜査”というわりに、警察上層部や政治家の姿が一切出てこないのはどう考えても不自然である。新聞や雑誌等、他のメディアの扱いも実に形骸的である。そもそもがリアリティの薄いドラマなのだから、そこに説得性を持たせるような“肉付け”は疎かにして欲しくなかった。
アイディアが良かっただけに、こうした詰めが甘さが惜しまれる作品である。