所々に違和感を感じてしまう。
「WiLd LIFe」(1997日)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 元ボクサーの宏樹は津村商会でパチンコの釘師をしている。社長の津村とは旧知の仲で、何かと面倒を見てもらっていた。ある日、いつものように仕事をしていると、そこに津村の娘理恵が訪ねてくる。数年ぶりに再会した二人は急激に惹かれあっていった。そんな中、津村が関西ヤクザ伊島に誘拐される。その後、宏樹は伊島から“あるビデオテープ”を渡せと脅迫される。そのテープは宏樹のかつての同僚水口から貰っているはずだと彼は言う。しかし、宏樹にはまったく身に覚えが無かった。実は、そのテープにはある重大な秘密が隠されていた。
楽天レンタルで「ワイルドライフ WILD LIFE」を借りようgoo映画映画生活ランキング参加中です。よろしければポチッとお願いします!


(レビュー) ヤクザと警察の暗躍に巻き込まれてしまう釘師をサスペンスフルに描いたハードボイルド作品。
事件のからくりは分かってしまえばよくある話と一蹴できてしまうが、ミステリアスな語り口に魅せられる。事件に関わる人物、宏樹と水口の関係、水口と津村の関係。このあたりを謎に伏せたまま物語は展開されていく。特に、事件の鍵を握る水口の存在を終始ミステリアスに仕立てたところが良い。
物語は現在と過去を交錯させながら進行する。
まず、宏樹と津村が警察で取調べを受けるシーンが現在パートになる。そして、宏樹と津村と水口の関係、ヤクザの狙いといったものが過去のフラッシュバックで回想されていく。ただ、この回想は決して宏樹と津村の一人称で語られているわけではない。例えば、ヤクザ側の視点に立ったものや理恵の視点に立ったものも混在し、視座があちこちに飛んでしまうところに統一感の無さを感じた。そうしなければ事件の全容を説明できないというのは分かるが、回想は当人の語りで描いて欲しいものである。複雑で分かりにくい感じがした。しかし、統一感の無さを除けば、この回想劇はミステリとして中々面白く見る事が出来た。
尚、ここまで回想の視座に統一感がないのであれば、津村の取調べについてはサスペンスを弱めるだけでむしろ無かった方が良いのではないかと思われる。というのも、彼が今ここで取調べを受けているという事は、誘拐されても無事だった事を最初から観客に教えているようなものであり、過去の誘拐騒動にまったく緊張感がなくなってしまうからだ。
監督、脚色はこの前の記事で取り上げた
「レイクサイド マーダーケース」(2004日)の青山真治。本作は彼の3作目の作品になる。映像は所々に良いものが見つかる。例えば、大量に廃棄されたパチンコ台の幻想的な佇まい、デベロップメントの陽と陰の対比をドライに切り取った街並み、大胆な色彩設計も魅力的だった。
一方で、演出上の不自然さが幾つか見られたのは残念だった。これは感性の問題としか言いようが無い。
例えば、宏樹と理恵のキスシーン、クライマックスのアクションシーン、いずれも全体のトーンを考えると少し違和感を覚える。大の大人がまるで中学生のように恥ずかしながらキスをするのはいかがなものか?突然マンガチックになるアクションシーンは笑わせようとしているのか?全体とのギャップを感じてしまう。おそらく敢えてやっているような節も感じられるのだが、見ていてテンションが下がるだけなので変に奇をてらわないで欲しい。
また、音楽も垢抜けなくていただけなかった。他の作品ではこういう不満を感じなかったので、青山監督のセンスでないと信じたい。本作にはどちらかと言うと、静かなBGMの方が似合っていたのではないかと思う。