ここ最近忙しくて全然映画館に行けてなかったんだけど、久しぶりに映画館に行った。
すでに去年から公開されていて話題になっている作品「パンズ・ラビリンス」。
まだ都内でもやっていたということなので見に行ってきました。
「パンズ・ラビリンス」(2006メキシコスペイン米)
ジャンルファンタジー(あらすじ) 1944年、内戦で揺れるスペイン。12歳の少女オフィリアは身重の母に連れられて、山奥の屋敷へとやって来た。そこはフランコ軍を指揮するビダル大尉の屋敷だった。母が彼と再婚することになったのだ。山に潜伏するレジスタンスとの戦いが激化する中、オフィリアは心細さと不安で押し潰されそうになった。そんな時、屋敷の傍に大きな森を見つける。昆虫の姿をした妖精に案内されて行った先は地下深くにある洞窟。そこには牧神パンがいた。パンはオフィリアを魔法の国のプリセンスの生まれ変わりだと言う。冷酷な義父ビダル、日に日に体が弱っていく母、無情な戦争。現実から逃避するようにオフィリアは魔法の世界へとのめり込んでいく。
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(レビュー) 少女の空想世界を描いたダーク・ファンタジー。
監督脚本はギレルモ・デル・トロ。この監督の作品は「ブレイド2」(2002米)しか見てないが、その時はさほど印象には残らなかった。しかし、今回は作家としてのユニークさを前面に出しながら、独特の世界観が堅持された快作となっている。
オフィリアの不思議な体験は、実はそれほど奇をてらっているわけではない。数多あるファンタジー作品を見ている人ならば、紋切り的なアドベンチャーの世界と捉えるだろう。この映画が一線を画すのは、そこに戦争の現実という”影”を合わせ鏡のように組み込んでいる点である。オフィリアの空想世界、すなわち”光”と内戦に明け暮れる現実世界、すなわち”影”。この二つが見事なバランスで共存しこのドラマを成立させている。
幼い少女にとってこの現実は陰惨で孤独で余りにも過酷だ。空想世界に思いをはせるのも無理もない話である。その過程が実に丁寧に描かれている。娯楽性を好む客層には受け入れがたい語り口だろうが、この丁寧さは良心だ。そして、安易に空想世界に遊ぶことを良しとしないところも、製作サイドから発せられた良心としてのメッセージである。現実は厳然とした形で存在する。そのことをこの映画は教えてくれる。ほろ苦い鑑賞感は決して子供向けのファンタジー映画ではない。むしろ大人の鑑賞に堪えうるファンタジー映画だと思う。
とはいえ、やや現実の話を持ち込みすぎたかな?‥という印象は持ってしまう。確かに作品はリアリティを持つに至っているのだが、ファンタジー映画というジャンルにカテゴライズされる以上、もう少しドラマを空想世界に振り分けて欲しかった気もする。このあたりのさじ加減は好みの問題もあるので中々難しい。