詰めが甘い感じがした。キャストは◎。
「トレーニング デイ」(2001米)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 新米刑事ジェイクは、麻薬捜査課のベテラン刑事アロンゾとコンビを組むことになる。出勤初日、ジェイクはアロンゾの捜査を見て驚く。彼はせっかく捕まえたヤクの売人を釈放すると、没収したマリファナをジェイクに吸えと命じてきたのだ。強制的にそれを吸わされたジェイクは朦朧とした意識でパトロールすることになる。その後、ジェイクは裏通りでレイプされそうになっていた少女を助けた。しかし、またしてもアロンゾは自分達の管轄外だとして犯人を解放してしまった。ジェイクは彼のやり方に不信感を募らせていく。
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(レビュー) 正義に燃える新人刑事と悪徳刑事の対立を描いた刑事ドラマ。
善人ジェイク、悪人アロンゾ、両者は明確に善と悪に切り分けられるキャラである。彼らの対立を描く本作は基本的に勧善懲悪のドラマになっている。大変入り込みやすいドラマと言っていいだろう。だが、正直それだけでは食い足りないという感じも受けた。
アロンゾがジェイクの青臭い正義感に昔の自分を重ねる所までは良い。問題はそこからで、この映画はアロンゾの葛藤の深部まで迫りきれいていない。それまでのアロンゾを変えてしまった理由。そこをもっと深く掘り下げて欲しかった。そうすれば作品としての歯ごたえがもっと出てきたように思う。
今作のように、刑事が内部の不正を告発するドラマは、それこそ吐いて捨てるほどある。最も印象に残っているのがS・ルメット監督、A・パチーノ主演の「セルピコ」(1973米)である。「セルピコ」は、新人刑事セルピコが警察内部の汚職に失望し徹底的に周囲の不正と戦っていくハードな作品だった。しかし、似たようなドラマとはいえ、結末は本作とはまったく異なるものである。「セルピコ」の方が圧倒的にリアリティーと重みが感じられ、この問題に観客に正面から向き合わせようという強い志が感じられた。
それに比べると、本作の結末には“逃げ”が感じられてしまう。ジェイクは不正を正したが、その後はどうなったのだろうか?中盤でアロンゾを操る影の上層部が出てくるので、あるいは‥という想像は出来るが、そこ止まりである。しかし、そこを描いて初めてこの映画のテーマは強く主張されてくるのではないだろうか。どうにも気の抜けた結末でいただけない。
ジェイクを演じるのはE・ホーク。持ち前のナイーブさを前面に出しながら、悩める新米刑事を好演している。
アロンゾを演じるのはD・ワシントン。これまでは割と善人を演じる事が多かったが、以前紹介した
「アメリカン・ギャングスター」(2007米)と同様、ここでは悪役に徹している。レイプ犯のタマを潰す悪辣ぶりは相当なもので、新境地への意欲が感じられた。
但し、クライマックスの演技は大仰でいただけなかった。アロンゾの凋落を過剰に見せてしまっている。元々の尊大さとのギャップを図ろうとしているのは分かるが、かえって空回りしているように見えてしまった。とはいえ、本作を中盤まで引っ張ったのは彼の熱演によるところが大きいように思う。
演出はまずまずといったところか。アクションシーンは決して派手ではないが、堅実に撮られてる。また、たった一日のドラマをスピーディーな構成と会話の妙で最後まで飽きなく見せた手腕は見事である。
一方、シナリオで雑と感じたのが2点ある。アロンゾとロシア・マフィアの関係が今ひとつ不明瞭だった点。それとクライマックス直前のジェイク脱出劇は伏線の甘さが仇となり、ややご都合主義に見えてしまった。