このドキュメンタリー映画面白すぎ。
「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」(2010米英)
ジャンルドキュメンタリー
(あらすじ) 素顔を隠しながら世界をまたにかけるストリート・アーティスト、バンクシー。本作は彼を取材することになった一人のアマチュア映画監督の姿を捉えたドキュメンタリー映画である。
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(レビュー) 西海岸で古着屋を営業しながら趣味でアマチュア映画を撮っているティエリーの数奇な運命を、斬新な構成で綴ったドキュメンタリー作品。
初めはティエリーが様々なストリート・アーティストをカメラに収めていくドキュメンタリー映画かと思って見ていたのだが、後半からガラリと視点が変わっていく。彼の取材対象だったバンクシーが、逆にティエリーを追いかける映画になっていくのだ。撮られる者が撮る側になり、撮る者が撮られる側になるという逆転現象。この変わった構成が意外性があって面白い。
見どころは、後半から描かれるティエリーの嘘みたいな人生だろう。正直言って、ここまで来ると笑えてしまう。バンクシーが、自分を取材した彼を逆に撮ろうとしたのも分かる気がする。それくらい冗談みたいな人生だった。
と同時に、そこには世間の風潮に流されやすい大衆の愚かさというのも見えてきて苦笑してしまう。アートとは本来純粋な創作姿勢にこそ宿るものだと思う。しかし、ティエリーのアートは中身ではなく外見で勝負するビジネスシステムに乗っかって世間に評価されていく。マーケット至上主義と言えばいいだろうか。これは何もアートの世界に限ったことではないが、確かに現代の一側面を正確に表していると思った。複雑な思いにさせられる。
こういうのはドラマとして見せられると、いかにもさもありなん‥という感じで説教臭く映ってしまうが、ことドキュメンタリーという形で見せられると有無をも言わせぬ説得力を帯びてくる。
個人的には、劇中に登場する著名アーティスト、シェパード・フェアリーの言葉に共鳴した。ティエリーは決して正しい方法で今の地位に辿り着いたわけではない。いずれメッキがはがれる時が来るかもしれない‥と彼は言う。果たして、ティエリーの今後はどうなるのか?映画を観終わった後に気になってしまった。