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大阪の宿

貧乏を扱った人情悲喜劇。クライマックスの座敷のシーンがしみじみとくる。
大阪の宿 [DVD]大阪の宿 [DVD]
(2007/09/29)
佐野周二、乙羽信子 他

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「大阪の宿」(1954日)星3
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 保険会社に勤めるサラリーマン三田は、あることが原因で大阪支店に左遷される。川沿いの小さな旅館に下宿することになった彼は、そこで3人の女中とオッサンと呼ばれる女将の弟の世話になりながら新しい生活を始めた。ある晩、大学時代の親友田原が芸子のおようを連れてやって来た。再会を祝して杯を交わす3人。それからというものの、おようは三田の事を密かに想いながら、度々訪ねに来るようになった。しかし、三田は毎朝通勤中に見かける名も知らぬ女性に惹かれていく。
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(レビュー)
 大阪下町を舞台にした人情ドラマ。堅物サラリーマンと周囲の人間との交流をしみじみと謳いあげた作品である。それほど大きな事件が起こるわけでもなく三田の日常が淡々と綴られていくだけの物語だが、ラストにはしみじみとさせられた。

 ここに登場する人物は皆、貧困に喘いでいる。ここがこの映画のポイントで、今作をある種下町人情劇のようなドラマに仕立てている。

 旅館の3人の女中達は年齢も思考も異なる個性派揃いである。ヤクザな夫を抱えるおりか、遠くの息子を思うシングルマザーおつき、奔放でしたたかな若いお米。彼女らは、いつか幸せを‥という夢を思い描きながら、貧しさに耐えながらこの旅館で働いている。
 洋服店の少女おみつは病弱な父を抱えながら一人で店を切り盛りしている。彼女は詐欺と知らずに三田に偽のブランド品を売ってしまい、これによって更なる不幸に追い詰められてしまう。
 このように各登場人物は夫々に苦悩を抱えながら力一杯生きている。そこが健気で愛おしく映りしみじみとくるのだ。

 一方で、この物語には陰鬱とした展開を軽妙にさばく明るいサブキャラが登場してくる。それが女将の弟、通称〝オッサン”だ。周囲に笑いをもたらすピエロ的キャラで、これが案外重要な役回りを果たしている。彼の存在なくしてこのドラマは成り立たないだろう。

 また、乙羽信子演じる芸子おようのきっぷのよさも、沈滞ムードを絶妙のさじ加減で和らげてくれる。彼女は“うわばみ”という相性で呼ばれるくらい酒が強くて根っからの楽天家である。彼女の存在もこのドラマの中では大きい。
 ちなみに、おようは三田に密かに恋焦がれているが、その男前な性格からどうしても友情以上の関係になれない。それでも三田を思ってあれこれ世話を焼く姿は実に健気に映った。中でも、日頃の陽気さとのギャップで見せる川のシーンが素晴らしい。彼女は三田に少しだけ本当の自分を曝け出してみせるのだが、このしおらしさが何とも味わいがあって良かった。

 ただ、一方でここまで貧乏を強調されると、三田のセリフにあるように、金ではなく心が大切なんだ‥というメッセージが少し説教臭く感じてしまう。善人と悪人の描き分けもカッチリとしすぎており、もう少し複雑な彩を織り込んでも良かったのではないだろうか。善は善、悪は悪と単純に分けるのではなく、善と悪の狭間にこそ人間の本性がある‥という風にすればこの説教臭さは払拭されただろう。

 例えば、旅館の女将などは、やりようによってはかなり面白いキャラにできそうである。彼女は女中を虐める悪人として造形されている。しかし、その一方で夫を亡くして一人で旅館を切り盛りする苦労人でもある。次第に経営が立ち行かなくなり、彼女は店を手放すかどうかで苦悶するようになる。その葛藤を拾い上げることでキャラクターに幅を持たせることは出てきたと思う。ドラマに深みがもたらすなら、このようなリアルなキャラクター造形をもっと積極的に披露して欲しかった。

 また、説明不足なキャラがいて、このあたりの処理の仕方も勿体ない気がした。三田の隣の部屋に住む野呂は、後半の接待シーンでようやくその素性が判明したくらいで、こういう情報はもっと事前に提示して欲しかった。

 ちなみに、、劇中に登場する三田の愛読書「星は地上を見ている」に何か特別な意味があるのかと思って後から調べてみたら、この本は過酷な運命を辿る労働者一家を描いた小説であることが分かった。なるほど、労働者の悲喜劇という点では本作と共通している。と同時に、“うわばみ”が三田を称して「あんたは星だった」というセリフの回答にもなっていて、この書物の使い方は中々気の効いた演出に思えた。
[ 2011/08/30 03:36 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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