話は面白いが演出が今一つ。
「魍魎の匣」(2007日)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 探偵榎木津礼二郎は、女優・柚木陽子から失踪した娘の捜索を依頼される。一方、売れない作家関口は、多発している連続バラバラ殺人事件をネタに新作の準備に取り掛かっていた。彼は事件を調べていくうちに、ある新興宗教が深く関わっていることを嗅ぎ付ける。そして、その事件は木場刑事も捜査していた。彼は宗教団体の本拠地に乗り込むが、何の手がかりも得られなかった。落胆して帰ろうとしたその時、柚木の娘が電車に轢かれて死んだという知らせを受ける。榎木津、関口、木場は、混沌とした様相を呈する事件の解決を、憑物落としで有名な京極堂の主人、中禅寺秋彦に相談する。
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(レビュー) 人気小説“京極堂シリーズ”の1編を映画化した作品。
柚木陽子の娘の失踪事件。連続猟奇殺人事件。事件の背後に存在する新興宗教団体の暗躍。複雑に絡まりあう3つの事件と陰謀を解決するために、お馴染みの個性溢れるキャラ達が活躍している。
キャストは前作「姑獲鳥の夏」(2005日)とほぼ一緒であるが、一部で変更がある。本作は"キャラクター映画"のようなところがあるので、キャスティング次第では全然入り込めない作品になってしまうかもしれない。特に、原作に強い思い入れがある人にとってはそのあたりは大きな評価の対象になると思う。自分は本作は未読だが別のシリーズは読んだことがある。その範囲で言わせてもらえれば、それほど原作のイメージからかけ離れているような感じは受けなかった。ただ、クドカンに関しては完全にミスキャストと言わざるを得ない。コメディとしてのイメージが強すぎるため、どうしてもシリアスな演技に無理を感じてしまう。
物語は軽快なテンポで進み飽きなく見れた。原作からどの程度脚色されているのか分からないが、これは元々のストーリーの面白さという気がする。さすがは人気原作だけのことはある。
しかし、面白いストーリーだから面白い映画になるかというと、そうは問屋が卸さない。今回は演出的な部分でずいぶんと興が削がれてしまった。
たとえば、会話シーンをわざわざ細かいカットで切り替える必要性が分からない。ここまでアップテンポな演出は必要だろうか。むしろ、じっくりと見せてくれたほうが、集中して映画に入り込みやすい。
また、クライマックスの盛り上げ方も決して上手いとは言えない。序盤から続くアップテンポな演出が、トーンの均一化に繋がり、見せ場の迫力を失わせてしまっている。この手のエンタテインメントはいかにメリハリを効かせて、トーンのバイブレーションを図るかが重要である。それが本作はなっていない。
監督の原田眞人は決して凡才ではないが、作品によってはつまらなくなってしまう場合がある。
たとえば、以前紹介した
「KAMIKAZE TAXI」(1995日)や
「クライマーズ・ハイ」(2008日)といった大人向けの作品は中々上手く作られていると思う。しかし、今作や「ガンヘッド」(1989日)、あるいはそれ以前のアイドル映画は、観客のニーズに合わせすぎるのか、その才能を活かしきれてないような気がしてしまう。
美術背景等、プロダクションデザインは頑張っていると思った。昨今、邦画界もVFXの技術の進歩のおかげで時代背景のリアリティに随分と厚みをもたらすことが出来るようになってきた。「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005日)などはその好例だろう。本作もそれと遜色ない町並みが見られる。
キャストでは、失踪した娘を演じた谷村美月の頑張りを評価したい。彼女は
「十三人の刺客」(2010日)でもそうだったが、不思議と異形の姿が似合ってしまう。独特な雰囲気を持っていて今後が益々楽しみな女優の一人である。