設定の面白さに目を見張る。
「東のエデン 劇場版Ⅰ The King of Eden」(2009日)
ジャンルアニメ・ジャンルSF・ジャンルサスペンス・ジャンルロマンス
(あらすじ) 100億という大金がチャージされたノブレス携帯を渡され日本を救う使命を受けた11人のセレソン。その一人に選ばれた少年滝沢は、60発のミサイル攻撃から日本を守って姿を晦ましてしまった。それから半年後、行動を共にしていた女子大生咲は、滝沢が残したノブレス携帯を頼りに彼を探しにニューヨークへ飛ぶ。
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(レビュー) 2008年にTVシリーズとして作られたアニメ「東のエデン」の劇場版前編。
TVの続編にして完結編となる本作では、日本を救う役目を負った少年滝沢のその後のドラマが描かれている。過去のストーリーや設定などの説明は一切ないので、予めTV版を見た上で鑑賞した方がいいだろう。でないと、中々入り込むのは難しい作品だと思う。
前作の半年後からストーリーが始まっているが、事件が与えた社会的な影響、2万人のニートの動向、東のエデンの立ち上げといった所が、咲のナレーションで説明されている。尺の関係でこうするよりほかなかったのだろう。もう少し気の利いた説明の仕方はないものか‥と思ったが、まぁ仕方がない。只でさえ情報の密度が高い作品であるし、1クールのTVシリーズだけでは描ききれなかった事件、人物達がまだまだ多く残っている。キーワードとなるものはTVシリーズでほぼ出尽くした感はするが、まだ未消化な部分が多く、まずは直近の設定の説明から入ったのは賢明な選択に思えた。ただし、東のエデン・システムは物語の重要な意味を成す物なので、ナレーションで簡単に済ますのではなくもう少し具体的な説明があっても良かったような気がした。
本作の見所は何と言っても世界観の設定だと思う。
原作・監督・脚本は神山健治。彼の「攻殻機動隊S.A.C.」シリーズの緻密な世界観作りには大いに感心させられた口である。その肝要を成すのは現代社会を匂わすアイロニカルなテーマ選定だと思う。今作でも、テロ、ニート、ケータイ、日米問題といったものが確認でき、我々が住む現代の日本でも身近に感じられるガジェットが散りばめられている。キャラの造形や画面のポップさに目を奪われると、このあたりの問題提示の鋭さには中々気付かないかもしれない。しかし、個人的には本作の魅力はそこにあるように思う。
尚、今回ドラマ的に一番の面白く見れたのはセレソン№1の動向だった。まさかそれは禁じ手でしょ?というような意外な行動が面白かった。世界観のリアリティを追求すればするほど、中々はじけたアクションシーンを盛り込めなくなってしまうが、ドラマを破綻させることなく上手くエンタメ的なカタルシスを引き出している。
一方で、情報量の多いドラマを展開させなければならないため、性急に映る場面も幾つかあった。色々と腑に落ちない箇所があり、そこには明らかにドラマを進めなければならないという作り手側のジレンマが伺える。
たとえば、咲と滝沢の再会はドラマチックというよりも強引過ぎるという思いの方が先に立ってしまった。偶然として片づけるにはあまりにも安易で引っ掛かりを覚えてしまう。