設定の上手さは目を引くが、突っ込みどころ満載なバカ映画である。
「ゾンビ特急“地獄”行」(1972スペイン英)
ジャンルホラー
(あらすじ) イギリス調査隊のサクストン教授は満州の氷山から古代ミイラを発見する。一行はそれをシベリア鉄道に乗せて持ち帰ることにした。ところが、途中でミイラが眠りから覚め、次々と乗客たちを襲い始めた。サクストンは列車に同乗していたウェルズ医師の協力を得ながらミイラを倒そうとするのだが‥。
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(レビュー) ゾンビ特急というタイトルに物申したい。というのも、ここに登場する怪物はゾンビと言えばゾンビだし、ゾンビじゃないと言えばゾンビじゃない。基本的にはミイラなのだ。何とも微妙な怪物である。しかも、後半でミイラの正体が判明するのだが、これが想像のはるか斜め上を行っていて呆気にとられるしかなかった。バカ映画として割り切った上で見る分には楽しめるが、一々理屈を考えていたら見れない作品であろう。
ただ、バカ映画とは言っても、作り手たちは決していい加減な気持ちで作っているわけではないということはよく分かる。少なくとも見る側を楽しませようという工夫はそれなりに凝らされていて、そこには好感が持てた。
まずは、列車という逃げ場のない極限的状況に魅力を感じた。そこで繰り広げられるワケあり人間達の衝突もサスペンスを上手く盛り上げており、中々の歯ごたえを感じさせる。但し、後半のコサックの登場はそれまでの緊密なサスペンスをぶち壊してしまっている。出来ることなら伏線をきちんと張って、その上で控えめに登場して欲しかった。
恐怖演出は今見ると朴訥とした感が否めないが、ミイラに襲われた者が白目を剥いて死ぬシーンは中々のビジュアル・ショックを持っている。疾走する列車とミイラの急襲シーンを重ねるカットバック演出も、常道であるが上手く恐怖を盛り上げていると思った。
尚、本作を見てH・ホークスが製作したSFホラーの古典「遊星よりの物体X」(1961米)を思い出した。本作のミイラと物体Xの設定にはかなりの共通点が見つかる。SF的な考証が甘い分こちらはバカっぽく見えてしまうが、ミイラ退治の原理は物体Xのそれと一緒だ。
キャストはC・リー、P・カッシングという2大怪奇映画の大御所が競演している。ファンなら垂涎ものだろう。また、T・サバラスも独特の風貌を活かして大立ち回りを見せている。本作では彼が一番おいしい役所かもしれない。