原作を無視したラストに衝撃!
「江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者」(1976日)
ジャンルサスペンス・ジャンルエロティック
(あらすじ) 郷田はアパートの屋根裏から他人の部屋を覗くのが趣味だった。ある日、ふらりとやって来た高貴な貴婦人とピエロの恰好をした隣人の性交を目撃する。貴婦人は天井裏の郷田に気付くと更なる興奮に震えた。それを見た郷田も貴婦人の虜になっていく。ある日、郷田は抑えられない欲望を吐き出すために、自分もピエロの格好をして売春婦を買ってみた。しかし、どうしてもそれだけでは満たされなかった。その後、再び貴婦人とピエロの逢瀬を覗き見した。すると、恐るべき光景に出くわしてしまう。
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(レビュー) 江戸川乱歩の短編小説「屋根裏の散歩者」を映像化した作品。
この原作は何度か映像化されているが、本作が一番最初の作品ではないかと思う。尚、1994年に実相寺昭雄監督が映像化したものは見ているが、内容がかなり違うことに驚かされた。どちらかというと実相寺版の方が原作に忠実なのだろう。本作には乱歩の「人間椅子」のエピソードも追加されており、どちらかというと乱歩作品のコラージュのような作りになっている。
しかし、こうした複数のエピソードを詰め込んでしまったために、ドラマとしての統一感にはやや欠けるという気がした。郷田と貴婦人・美那子の愛憎ドラマ以外に、運転手の愛憎ドラマまで絡んできて何だかとっ散らかった印象を受ける。
もっとも、人間椅子のエピソードがあることで、見せ場としての面白さは実相寺版よりも工夫が凝らされている。また、美那子の倒錯した性癖をディープに掘り下げることにも奏功している。人間の欲望がいかに果てしなく恐ろしいものか‥ということはよく表現されていると思った。
欲を言えば、郷田の心理変化が形骸的なのでもう少し丁寧に描いてほしかったか‥。中盤で美那子に対して「あなたも僕と同じ種類の人間のようですね」と言い放つシーンがあるが、美那子の変態性を上から目線で語るこのセリフは一体どこから出たものなのだろう?彼女の危うい魅力に取りつかれたはずの彼が、いつの間にか彼女を超える変態になっていたことに「え?」という疑問を感じてしまった。
ところで、この映画は結末が凄いので、これを見るだけでも一見の価値があるかと思う。おそらく原作との一番違いはここだろう。これはちょっと予想できないオチだった。乱歩のデカダンな世界をかくもアナーキーにぶち壊してしまうとは‥。これがあることで本作はとんでもない怪作になってしまっている。