ちょっとブラック風味が入った爽やかな姉妹のドラマ。
「サンシャイン・クリーニング」(2008米)
ジャンル人間ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ) シングルマザーのローズはハウス・クリーニングをしながら、高校時代に付き合ってた警察官マックと不倫をしている。彼女の妹ノラはバイトをしながら老いた父と暮らしている。ある日、ローズはマックから稼ぎの良い仕事があることを聞かされる。それは事件現場のハウス・クリーニングをする仕事だった。ローズは早速ノラを誘ってその仕事を始めることにした。ところが、現場は想像以上に過酷で‥。
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(レビュー) ダメ姉妹の奮闘をシニカルに描いたヒューマン・ドラマ。
いわゆるこれもルーザー再生ドラマと言っていいだろう。この手の作品で肝心なのは、いかにキャラクターに愛着を持たせることが出来るか‥である。その点で言えば、本作は水準以上の出来と言っていい。
姉ローズは小学生の息子を抱えるシングルマザーである。高校時代には学園のアイドルだったが、今やすっかり日陰の女に落ちぶれている。妹のノラはバイトを転々としながら実家に寄生している自立できない女性である。二人は共に仕事も家庭も持てず、何をやっても上手くいかないみじめな人生を送っている。
人生とはそう思うように上手くいかないものである。成功を夢見ても彼女等のように浮かばれない人生を送っている人が大半であろう。だからこそ、彼女らのもがき苦しむ姿をわが身に引き寄せて見ることができる。
物語はそんな彼女らに高収入の仕事の話が舞い込んでくることで展開されていく。それは殺人現場や自殺現場の後始末をするという、誰もやりたがらない仕事だ。
こう書くと実に悲惨な話に思えるが、嫌味の無い語り口が彼女たちの苦労をどこか屈託のないものに見せている。
冒頭の自殺シーンからして相当ショッキングだが、本作には所々にこうしたブラックなテイストは登場してくるものの、基本的には姉妹の成長と情愛を綴ったハートフルな作りになっており鑑賞感も割と爽やかである。
テーマの炙り出しもよく出来ていると思った。姉妹の絆を深めるものとして“ある過去”が用意されているのだが、それを乗り越えることで成長していく‥という過程が丁寧に描かれている。ロジカルに組み立てられたシナリオで実に見やすいし、オチにも納得できた。
また、キャラクターのコントラストを上手く利かせながら、物語は流麗に転がされている。いずれも似たり寄ったりのダメ姉妹であるが、ノラにいたっては孤児のように存在しており、そのキャラクター性は彼女の飼い猫にも象徴されている。彼女はローズに対するコンプレックスも持っていて、それによって姉妹の対立が随所にドラマチックに展開されている。
ただし、終盤にかけての展開は今ひとつ‟押し”が弱く感じられた。無線やテレビドラマといった伏線のあざとさが原因である。簡単に読めてしまうあたりがいただけない。伏線はもう少しさりげない形で登場させてほしい。
また、本作にはローズとノラの姉妹愛以外にもう一つ、父親とローズの息子の関係を追いかけるサブエピソードも用意されている。こちらについてはどこまで迫るかは難しいところだろう。シナリオの“遊び”としては中々面白いと思うが、本筋はあくまで姉妹愛の方であり、必要最小限に留めた方が良かったのではないかという気がした。全体のバランスからみても、ここまで踏み込んでしまうとかえって中途半端に写ってしまう。