邦題は「電車男」のパロディだが内容は全然違う。主人公のダメっぷりが素晴らしい。
「バス男」(2004米)
ジャンル青春ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ) 高校生のナポレオンは、引き篭もりの兄と祖母と冴えない日常を送っている。学校では虐められっ子で友達は一人もいない。ある日、家に同じクラスのデビーという地味な女の子が押し売りにやって来た。これがきっかけで彼女との交流が始まる。メキシコ人の転校生ペドロも加わり、ナポレオンの学園生活は少しだけ潤っていく。そんなある日、旅に出ていた祖母が怪我をして入院してしまう。彼女に頼まれて叔父が家にやって来た。ところが、この叔父は定職にも就かず未だに独身でいる困りもので、一獲千金を狙って兄と訪問販売の商売を始めると言い出す。
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(レビュー) 冴えない高校生ナポレオンの日常を淡々と綴ったオフビート・コメディ。
主要キャラは皆かなりクセがあり、全編に渡って垂れ流される脱力ギャグも含め、決してウェルメイドな青春コメディではない。どちらかというとちょっとだけ可笑しい、クスクスと笑えるといったタイプのコメディである。
この独特の笑いはW・アンダーソンの作品を連想させる。彼の出世作「天才マックスの世界」(1998米)や「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」(2001米)あたりにかなり近いと感じた。例えば、俳優の正面と真横のショットを淡白に積み重ねるカメラワーク、いたずらに感情を表に出さない演技、微妙にずらした会話の“間”。これらはW・アンダーソン作品の大きな特徴であるが、本作の演出もそれと傾向が似ている。
あるいは、T・ツワイゴフ監督の「ゴーストワールド」(2001米)の作風にも似ているような気がした。これも独特の空気感を持ったオフ・ビートな青春コメディだったが、こうしたインディペンデント系の作家には共通して社会を斜に見るような傾向が見られる。それが棘のある作風に繋がっている。万人には受け入れられないかもしれないが、個人的には割と好きだったりする。
さて、今作の見所は何と言ってもナポレオンを演じたジョン・ヘダーの魅力。これに尽きると思う。彼は本作でデビューし、その後多くのコメディ映画で主役を張っていく。初主役でスターになったのだから実に幸運な男と言えよう。
本作では空気の抜けた喋り方、精気を失った目で、非モテ男子の屈折振りを、ひたすらネガティブに体現している。はっきり言ってこんな奴が現実にいたらイラつくというレベルではないし、関わりあいたくないと言うのが本音であるが、物語世界の中ではこのくらいアクが強いと不思議と魅力的に思えてくる。
逆に言えば、ヘダーのこの徹底したダメッぷりがお膳立てされているから、クライマックスの一発逆転劇にカタルシスを覚えるのだろう。何だかんだと言って、プロット自体はオーソドックスな青春寧画としてよくまとめられている。実に爽快だった。
ただし、その後のオチはさすがに強引である。エンディングのオマケも不要に思った。蛇足でしかない。
尚、ギャグシーンとしては、フライドポテトのネタと自転車のネタが一番笑えた。決して爆笑というわけではないが楽しいシーンになっている。