「猿の惑星」の前日談を最新のVFXで映像化したSF映画。
「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」(2011米)
ジャンルSF・ジャンルアクション
(あらすじ) アルツハイマーの新薬の研究に携わっているウィルは、チンパンジーを使った生体実験を行っていた。ところが、新薬を投与されたチンパンジーが暴れ出し開発は中止される。実験体はすべて処分されることになったが、ウィルは赤ん坊のチンパンジーだけは良心が傷んで殺せなかった。それから2年後、そのチンパンジーはシーザーと名付けられて、ウィルと認知症に苦しむ彼の父、獣医をしている恋人キャロラインと幸せな暮らしを送っていた。シーザーは遺伝の影響で驚異的な知能を持っていた。
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(レビュー) Sf映画の名作「猿の惑星」(1968米)の前日談を描いた作品。何故地球は猿に征服されてしまったのか?その原因が本作で明らかにされる。
ドラマはシーザーの反乱を軸に展開されていくが、一方でウィルと認知症の父の関係描写もサブストーリー的に添えられている。ウィルとシーザー、ウィルとウィルの父の関係を相関させることで父子愛というテーマを炙り出そうとしたのだろう。ジャンル映画の枠を超えて人間ドラマ的なテーマを出そうとした製作サイドの狙いは、一定の成果を果たしているのではないかと思う。ただし、メインのドラマにこのサブ・ドラマがどれだけの配分で必要だったか‥という所については疑問に残ったが‥。
メインとなるシーザーの葛藤はそつなく描けている。母の死を乗り越えて新しい家族ウィルたちと育む愛。その愛を引き裂く周囲の人間たち。それに立ち向かっていくクライマックス‥と、実にオーソドックスに構成されており、捻りはないものの彼の悲劇が過不足なくトレースされており、見ているこちら側にもすんなり入ってきた。
ただ、所々にシナリオ上の穴があり、釈然としない箇所も幾つかあった。
第一に、研究所の管理体制がずさんすぎる点が挙げられる。ウィルはシーザーが生まれていたことを知らなったような口ぶりだったが、ずっと監視していたのにさすがにそれはないだろう。
また、クライマックスの猿達の一斉行動も、単にその場のテンションだけ押し切ったという感じがしてしまう。薬を嗅いでない猿達をシーザーはどうやって統制できたのだろうか。他にも、ラストのウィルのアッサリ感、キャロラインの存在感の薄さ等々、こうした方が良いだろうという不満点が幾つかあった。
一方、最新技術で再現された猿達の演技を含め、映像面は大いに見応えがあった。モブになると一部で明らかにCGっぽいチープさは見られたものの、それ以外は生身のチンパンジーと見紛うほどのリアルさである。今回は「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ等で使用されたパフォーマンス・キャプチャーでシーザーが造形されている。ゴラムを演じたA・サーキスが演じているのだが、全身の動きから細かな表情のしぐさまで見事な演技を見せている。作り物だと知っていても、これには思わず感情移入してしまいたくなった。技術の進歩がここまできたことに驚かされる。