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ミッション:8ミニッツ

新鋭D・ジョーンズがまたまたやってくれた!ユニークな設定と抒情的な展開で魅せるサスペンス作品。
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「ミッション:8ミニッツ」(2011米)star4.gif
ジャンルサスペンス・ジャンルSF
(あらすじ)
 米軍に所属するスティーブン大尉はシカゴ行の列車の中で目を覚ます。自分はさっきまでアフガンで戦っていたのに何故‥?前の座席に座っていた女性は自分のことをショーンと呼んだ。鏡を見ると全くの別人になっていることに驚く。その直後、列車は爆発炎上した。目を覚ますと彼は真っ暗な機械の中にいた。モニターに写る女性士官グッドウィンから驚愕の事実を知らされる。
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(レビュー)
 テロリストを探すために8分間の記憶の世界に入り込む男の非情な運命を、緊迫感あふれるタッチと抒情性を漂わせた演出で描いたSFサスペンス作品。

 監督はデビュー作「月に囚われた男」(2009米)で注目を集めた新鋭D・ジョーンズ。
 〝閉ざされた空間”からの脱出というアイディアに前作との共通性が見られるが、今回は別のライターが脚本を担当している(前作はダンカンが原案を担当)。そのせいか「月に囚われた男」の妙味だったナンセンス且つアナクロニズムなテイストは一掃され、先鋭化されたスタイリッシュな演出が横溢する。同じSFでも違った作家性をのぞかせたところに新しい資質が感じられた。ただ、格闘などのアクションシーンで一部野暮ったく撮られている箇所があったのは残念である。まだ2作目ということで、このあたりは今後更に洗練されていくと思うが、ともかくも今後も期待出来る監督だと感じた。

 物語はいわゆるパラレルワールド物の一種と言っていいだろう。スティーブンは軍の開発した特殊なプログラムによって列車爆破犯を探すミッションに挑んでいく。
 タイムスリップをこういう形でアレンジしてきたところは新鮮である。以前紹介したD・ワシントン主演の「デジャブ」(2006米)との共通性も感じられた。ただ、向こうは少々理屈の説明に偏重しすぎで、結果的に後半に行くにつれてボロが目立ってしまった。こういうのは最初から現実味の薄い設定であることは分かり切っていることなのだから、別に理屈に凝らなくてもいいような気がする。本作はこのシステムの説明を敢えて軽く流す程度にとどめている。そこが成功のポイントだろう。むろん突っ込み所がないわけではないのだが、極力見る側に不信感を抱かせないような作りに徹している。

 そして、観客に不信感を抱かせる暇を与えないストーリーテリングの上手さ。そこも注目したい。
 物語は基本的にサスペンス調に展開されていくのだが、一方でミッションを繰り返していくスティーブンの内面にも迫っていくようになる。乗客達の最後の瞬間を何度も目撃することで彼は次第に精神的に追い詰められ、任務の重さに耐えかねていくようになる。乗客たちとコミュニケーションを取ることで徐々に彼らに愛着を抱くようになっていくのだ。特に、自分の分身であるショーンの恋人、クリスティーナに対しては恋愛感情が芽生える。決して結ばれることのないメロドラマ的な趣は先述の「デジャブ」しかり、「バタフライ・エフェクト」しかり、タイムトラベル物には定番のネタであり、この二つは大変取り合わせが良い。本作はこうした人間ドラマ的な面白さを徐々に出していくことで、悪く言えばSF的な設定の粗を上手くごまかしている。

 また、これまでのタイムトラベル物は、過去を変えることで現在や未来が変わるというのが一つのパターンであったが、今回はそこについても新機軸を打ち出している。すでに列車爆破は過去に起こったこととして書き換えられないものである。つまり、このミッションに成功しても愛するクリスティーナを救うことは出来ないのである。そこに彼の悲痛な思いを見ずにいられない。実は、彼が何故このミッションに就いているのか、そこにも‟ある理由”があるのだがこれを知ると更に泣けてくる。

 尚、ラストシーンを巡っては評価が分かれるように思う。一つにはこのオチが何を意味しているのか、分かりづらいという側面がある。また、悲観的な物語を少しだけ和らげようという作り手側の見え透いた狙いが感じられ、どうしても受け付けがたいという人もいよう。確かに蛇足な感じがしなくもないが、ドラマにインパクトを残すという点では効果があったように思う。
[ 2011/11/07 01:44 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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