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一命

真面目な三池流時代劇。こんなものも撮れるのか‥と良い意味で裏切られた。
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「一命」(2011日)star4.gif
ジャンル人間ドラマ・ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 関ヶ原の戦いの後、豊臣勢についた武士達の中には、生活に困窮し大名屋敷の前で狂言切腹するのが横行していた。ある日、井伊家の前に津雲半四郎という浪人がやってくる。彼は切腹したいので庭先を拝借したいと申し出た。当主・斎藤は、以前同じ用件でやって来た千々岩求女という若い浪人の話をする。斎藤は二度とこのようなことが起こらぬよう彼に切腹を許したというのだが‥。
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(レビュー)
 小林正樹監督の「切腹」(1962日)をリメイクした作品。

 困窮する武士の悲劇的な運命をドラマチックに綴った中々の力作だ。監督の三池崇史は前作「十三人の刺客」(2010日)に引き続き再び時代劇というジャンルに挑み、見事にこれまでの作家としてのスタイルからの脱皮を成し遂げることに成功したと思う。

 今回はガチでシリアスな時代劇になっている。前作は活劇の面白さを追求するために、まだ幾分三池流のギャグが残されていたが、今回は徹頭徹尾、真面目に作られていて、最後までストイックな姿勢を崩さなかった所にちょっとした感動すら覚えた。

 物語も端正に構成されている。半四郎が切腹する現在パートと求女の切腹する過去パートをシンプルにカットバックしながら、二人の思いが上手く表現されていた。特に捻りはないものの、作品に重厚さが生まれ夫々の葛藤も見えてきやすい。堅実にストーリーが組み立てられている。

 ただ、堅実は堅実なのだが、三池流のもう一つの特徴である凄惨なバイオレンス演出は今回も出てくる。前半のドラマのポイントである求女の切腹シーンにおけるの執拗な残酷演出。ここは好き嫌いがはっきりと分かれそうな気がした。ただ、個人的には求女の痛み、苦しみを強調するための演出ということを考えれば、ここは念入りに描いてなんぼ‥という気もする。逆にここが軽々しく描かれると、以後のドラマは引き締まらなくなってしまうだろう。それ以外については、ほとんどが会話劇、日常の芝居になっているので、こうした三池流バイオレンス演出は出てこないが、ここだけはハッキリと彼の嗜好が見て取れた。

 後半のポイントはチャンバラにシーンになるのだが、ここも緊迫感とスピード感があって中々良かった。降雪の演出にちょっとだけ「スキヤキ・ウェスタン・ジャンゴ」(2007日)のクライマックスが重なりクスリとしてさせられたが、そこは三池監督が考える映画の〝色気”なのだろう。本作は時代劇初の3D作品である。おそらくこの降雪は3Dを考えた演出なのかもしれない。今回は2Dでの鑑賞だったので、どういう風な効を発揮していたのかは未確認であるが、映画のケレンミを出すための三池流演出というふうに捉えた。

 キャストでは半四郎を演じた市川海老蔵の好演が光る。古典に身を置く者としての嗅覚と言えばいいだろうか‥セリフ回しや所作に貫禄が感じられた。一部で臭すぎる芝居は見られたが概ね好演している。 
 求女を演じた瑛太は何と言っても切腹シーンの熱演が見応えがあった。
 一方、ヒロインを演じた満島ひかりはファナティックな演技こそさすがに上手さが感じられるが、日常のセリフが少しぎこちなく聞こえた。貞淑な妻という役柄からだろう。全体的に声のトーンを弱めているのだが、普段演じているキャラクターとどうしても見比べてしまい不安定に聞こえた。
[ 2011/11/15 00:55 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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