古き良きB級ホラー。
「ハードカバー/黒衣の使者」(1988米)
ジャンルホラー・ジャンルサスペンス
(あらすじ) 古書店で働くバージニアは、ホラー小説にのめり込み過ぎて、最近不思議な幻覚を見るようになっていた。恋人のリチャード刑事に相談するが、笑ってまともに取り 合ってくれない。そんなある日、小説の中の殺人鬼がバージニアの目の前に現れて、本に描かれていた通りの殺人を犯す。
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(レビュー) 終盤に行くに連れてグダグダになっていくが、中盤まではストーリーテリングの上手さでグイグイと引き込まれた。理路整然としない部分もあるにはあるのだが、そこはそれ。この手の超自然現象に一々突っ込みを入れてしまうと映画を楽しむロマンが無くなってしまう。ある程度割り切った上で見るが吉である。
今作は所々に良い恐怖演出が見つかる。小説の中の出来事と現実の出来事は映像トーンがきっちり描き分けられており、小説内は60年代風なトーン、現実は現代的な‥と言っても今見ると少し古臭い80年代のトーンになっている。そして、そこで行われる殺人シーンの数々。これが中々良い。
例えば、ピアノ調律師が殺されるシーンは、殺人鬼が忍び寄る影の演出が秀逸だった。光と影のコントラストを効かせながら巧みに恐怖が盛り上げられている。また、その現場をバージニアが離れた場所から眺めるというシチュエーションも良い。A・ヒッチコックの「裏窓」(1954米)に通じるような〝覗き見”の背徳感が加わりゾクゾクするような興奮を覚えた。一部しか見せないほうがかえって怖い‥という観客心理を見事に突いている。
一方、残念だったのは先述の通り終盤にかけての展開である。図書館における犯人追跡のオチにはイスからずり落ちそうになった。ユーモアを盛り込むことに反対はしないが、あってもそれは物語の前半なら許せる。しかし、緊張感が張り詰めた終盤にこういうのを出されると興ざめしてしまうだけである。
そういう意味では、クライマックスに登場するアレも何だか滑稽過ぎて笑えてしまった。当時のCG技術が今みたいなレベルまで達していないことを考えれば仕方がない‥と言う気もするが、そこは演出でカバーしてほしい。