徹底した見世物趣味は好き嫌い分かれそう。全編に渡る陽気なテイストが独特な鑑賞感を残す。
「2000人の狂人」(1964米)
ジャンルホラー
(あらすじ) 南部の小さな町プレザント・ヴァレーに、ドライブを楽しむ2組の若いカップルと途中で連れ立った一組の男女がやってきた。町が100年祭で賑わう中、彼らは客として歓待される。その晩、カップルの一人が謎の失踪を遂げ‥。
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(レビュー) スプラッター映画の元祖H・G・ルイスが監督・脚本・撮影を兼ねたカルト作。
物語自体は町に誘われた6人の男女が次々と町人によって惨殺されていくというだけで、取り立てて面白味は感じない。
見どころとなるのはやはりゴア・シーンとなる。
斧で腕をバッサリ切り落とすというショッキングな光景に始まり、4頭の馬に四肢を繋いで走らせたり、釘を打った樽に入れて転がしたり、とにかく町人達の狂ったアイディアが恐ろしすぎる。しかも、それを見て彼らはヒューヒュー!と囃し立てるのだ。何とも奇天烈な絵面がシュールで不思議なテイストをもたらす。
カメラ、演出、特撮、全てにおいてローエンドな作りなので、描写自体にまったくもって迫力が感じられないのだが、その拙さもかえって見世物小屋的な〝いかがわしさ”を醸し、これぞまさしくB級映画という感じがした。
また、バックに流れる陽気なカントリー・ソングも奇妙な味わいをもたらす。緊張感を高めて然るべきシーンに、敢えてルイスは明るい音楽をガンガンかけてくる。このセンスも作品全体のシュールさに繋がっている。
しかし、一方で残酷な描写に漂うこの陽気さが、人間の無垢なる残酷性をリアルに表明している‥という捉え方も出来る。子供はよく虫などに残酷な仕打ちをしたがるものだが、町人たちの行為にもそれと同じものに思えた。この無垢なる残酷性は恐ろしいと言えば恐ろしい。監督がそこまで狙ってやっていたとすれば、それはそれで凄いことであるが‥。
総じて怖いというよりもブラック・コメディのような感覚で楽しめる作品である。人を食ったこのオチにもクスリとさせられた。