三島由紀夫の魂と感性が凝縮!
「憂国」(1966日)
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 昭和11年2.26事件が起こる。武山中尉は新婚のため仲間から決起に誘われなかった。その後、武山は皮肉にも彼らの鎮圧を命じられる。国も友も裏切れない彼は自ら死ぬことを決意する。
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(レビュー) 三島由紀夫が自らの原作を、製作・監督・主演・脚色・美術を兼ねて映像化した短編。彼の唯一の監督作である。尚、上映プリントが焼却処分されたということだったが、奇跡的にネガが自宅で発見されソフト化されるに至った。それまでは長年、幻の作品と言われていた。
古典芸能を思わせる整然とした美術と壮絶な切腹。死をここまで神々しく描いたところに三島の深淵さを見てしまう。このストイックさこそ三島芸術の真骨頂と言えるだろう。物語の内容も自身のイデオロギーの塊のようなもので、正に三島の三島による三島のためのワンマン映画となっている。
見どころとなるのは凄惨な切腹シーンとなろう。この生々しさ、痛々しさには目を覆いたくなる。と同時に、後の自衛隊市ヶ谷駐屯地での割腹自殺を連想させたりもする。
一方で、死とのコントラスで描かれる生、つまり愛する妻とのセックスシーンは実に美しく撮られている。少し大仰過ぎる気もしてしまうが、映像としての見応えは十分だ。
尚、本作はBGMに荘厳なオーケストラが流れるのみでセリフが一切ない。巻物が狂言回し的な役割を果たしてストーリーを展開していく。もはやここまでストイックに作られてしまうとぐうの音も出ないが、逆に言うと作風が作風だけに好き嫌いがハッキリと分かれよう。
本作に込められた三島由紀夫の思いをどこまでキャッチできるか?肝試し的な意味でも一見の価値ありな作品だと思う。