オリジナルの脱構築を我流でやり遂げたR・マーシャルの手腕は見事。
「NINE」(2009米)
ジャンル音楽・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 1968年ローマ。世界的映画監督コンティーヌは脚本を書けず悩んでいた。新作発表の席上から逃げ出した彼は、そのままリゾート地の高級ホテルに引きこもってしまう。そして、愛人カルラを呼び寄せて慰めてもらった。そこに映画会社のプロデューサーや妻ルイザが乗り込んできて‥。
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(レビュー) F・フェリーニ監督の傑作「81/2」(1963伊)を元にした大ヒット・ブロードウェイ・ミュージカルを、「シカゴ」(2002米)のロブ・マーシャル監督が映画化した作品。
タイトルが「9」となっているところに注目したい。今作はフェリーニの「81/2」の物語を基本的には踏襲しているが、虚実入り混じったオリジナル版に比べると随分と内容が分かりやすく書き換えられている。スランプに陥った映画監督と周囲の女たちとの愛憎を、華やかな歌とダンスシーンで紡いだストレートなバックステージ・ドラマになっている。リメイクと言うのとは少し違う。根本的にミュージカルありきな娯楽性の強い作りになっている。
本作の見どころはなんと言っても、名だたる女優陣が熱演を見せるミュージカル・シーンだろう。
カルラ役のP・クルスのセクシーなダンスに始まり、女性記者役のK・ハドソンのスタイリッシュなダンス、ルイザ役のM・コティヤールの熱唱等、色々と見どころが尽きない。特に、砂漠のセットを舞台にしたダイナミックな群舞には痺れた。「シカゴ」を撮ったロブ・マーシャルだけあって、ミュージカル部分はどれも満足いく出来栄えに仕上がっている。また、ドラマ・パートとミュージカル・パートは現実と幻想にはっきりと分かれていて違和感も感じなかった。
他にもJ・デンチ、N・キッドマン、S・ローレンといった名だたるベテラン女優陣が登場してくる。ミュージカル・シーンでの見せ場はそれほどないが、彼女たちがそこに存在するだけで画面は華やかになる。ちなみに、N・キッドマンがコンティーヌの帽子をさりげなく被りながら歩く夜のパリのシーンは洒落ていて良かった。
一方、男優陣で唯一気を吐くのがコンティーヌ役のD・デイ=ルイスである。オリジナル版のM・マストロヤンニを相当意識しているのだろう。肩をすくめながらコソコソと歩く姿に、何もそこまでコピーしなくても‥と思うのだが、男の情けなさはよく表れていた。