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安城家の舞踏會

戦後日本の価値観の変転を描いた人情ドラマ。
安城家の舞踏會 [DVD]安城家の舞踏會 [DVD]
(2008/06/27)
原節子、滝沢修 他

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「安城家の舞踏會」(1947日)星3
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 没落華族・安城家はこのたび屋敷を手放すことになり、父・忠彦はその売り先を決めかねていた。今や事業家として成功した元運転手の遠山、安城家とは因縁の関係にある興隆著しい新川。この二人で迷っていたのだ。次女・敦子はそんな父の姿を見て不憫に思う。そして、屋敷の最後の思い出に‥と舞踏会の開催を勧めた。こうして開かれた舞踏会だったが‥。
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(レビュー)
 没落華族の最後の舞踏会を様々な人間模様を交えながら描いた人間ドラマ。

 戦後間もない頃の作品で、当時の世相を反映しているという点で見応えがある。敗戦によって日本の財閥は解体され、それまでの華族、いわゆる金持ち一家は弱体化していったわけであるが、今作に登場する安城家も正にその煽りを受けた華族の一つである。安城一家の終末を描く本作は、戦前から連綿と続いた日本の社会の在り方そのものの終焉を表していると言える。

 安城家には父親と成人した3人の子供たちがいる。映画は屋敷を失う父・忠彦の悲嘆を描きつつ、それまでの華やな暮らしと別れを告げなければならなくなった子供たちの葛藤を追っている。

 長女・昭子は婚約を解消されたことで女としての自信を喪失してしまっている。次女・敦子は父を不憫に思い、屋敷の買い手を宿敵・新川ではなく、かつて屋敷に奉公していた善良な遠山にしようと画策する。長男・正彦は下女と肉体関係を持ちながら一連の状況を遠目に眺めている。

 この中で主人公となるのは敦子であるが、個人的に一番面白く見れたのは正彦のドラマだった。彼は新川の娘の求愛を知りつつ、これを〝復讐″の手段に使おうと非情に徹する。森雅之が終始ニヤケ顔で演じているのだが、これが実にイヤらしくて良かった。新川の面に泥を塗ってやろうという反逆精神が痛快であるし、それがどうしようもない放蕩息子という所が皮肉めいていて面白い。

 他のキャストでは敦子を演じた原節子の美しさが印象に残った。箱入り娘のお嬢様という役どころは正に適役で、父を支える献身ぶりも実に尊いものに写る。そして、何と言っても彼女の喋る日本語が実に美しい。「~あそばせ」「~ございますの」といった上品な言葉遣いは聞いてるだけで心地よい。また、単にお上品を決め込んでいるだけでなく、時に新川を憎々しげに睨みつけるなど、芯の強い女性像をさりげなく体現している。

 ただ、それ以外のキャストとなると、全体的に大仰な演技が横溢し今一つである。当時の洋画の影響もあるのかもしれないが、多少バタ臭く映る者たちもいた。特に、遠山を演じた俳優は、本来あるべき深刻さを大仰な演技で軽く見せてしまっていただけない。また、映画の結末自体は決して悪くはないのだが、この時の忠彦の変化が何だか軽く映ってしまい釈然としない思いも残った。
[ 2012/01/29 16:05 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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