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ヒミズ

荒んだ台地で繰り広げられる荒んだ青春映画。
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「ヒミズ」(2011日)星3
ジャンル青春映画
(あらすじ)
 大震災後の東北。中学生の住田祐一は錆びれた貸しボート屋で母と暮していた。母は毎晩飲んだくれて、父はたまに金をせびりにやって来る。ボート屋の敷地には震災で家を無くした人達がテント暮らしを送っていた。こんな状況で住田は将来に対して何の希望も持てないでいた。ただヒミズ(もぐら)のようにひっそりと暮らしたいと思っていた。そんな住田にクラスメイトの茶沢景子が好意を寄せる。ある日、母が男と一緒に蒸発してしまった。そこに父の借金の取り立て人が乗り込んでくる。何もかもが嫌になった住田は学校にも行かず家に引きこもるようになった。茶沢は何とか住田を立ち直らせようとするのだが‥。
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(レビュー)
 夢も希望もない荒んだ青春を送る少年が様々な苦難を乗り越えていく青春映画>。

 同名コミックの原作を異才・園子温が監督した作品である。今回映画化するにあたって、園監督は原作の舞台設定を3.11以降の被災地に変更している。日本人なら誰もが忘れられないあの大震災。それを持ってきた所に監督の「伝えなければならない」という強い意志が感じられた。事実、この映画の中には「頑張れ」という言葉が何度も登場してくる。これは明らかに被災者に向けられたメッセージだろう。
 また、復興支援の難しさについてもこの映画は問うている。住田を立ち直らせようとする周囲の人々の無償の善意。これが果たして本人のためになるのかどうか?という問題提起は中々鋭い。これまでの作品にも社会派的な眼差しは必ず入っていた園作品だが、今回も現代社会における大衆心理に一つの疑問符を投げかけているところは注目に値するだろう。

 このように原作からの設定変更は、単に話題作りのためにやったというわけではなく、今描かなければならない‥という園監督の表現者としての使命感から出たものであることは間違いないように思う。

 ただ、そうした監督の意欲を認めた上で敢えて言わせてもらうと、個人的には「愛のむきだし」(2008日)のようなストレートな青春映画を見せて欲しかった気がする。というのも、この大震災後という設定がドラマを語る上で特段必然性が感じられないからである。

 本作のテーマは一言で言ってしまえば、捨てられた子供たちの〝未来″だと思う。現状、住田も茶沢も家庭環境は劣悪だ。事あるごとに親から「お前なんかいらない」「早く死んでくれ」と言われている。住田に至っては親が家を出て行ったきり放ったらし状態にある。そんな彼らが互いを支え合いながら〝未来”を見据えて共に歩いていく‥というのが本作の最大のテーマであろう。しかし、このテーマを語る上で、3.11の大震災を持ってきた必然性は、映画を見る限り〝弱い″と言わざるを得ない。

 例えば、捨てられた子供・住田の、捨てた相手つまり親に対する憎しみは、このテーマを語る上で純粋なものとして描かれなければならないと思う。というか、これまでの園作品にも親子の確執は描かれてきたが、親に対する子の憎しみはそれこそ目も覆わんばかりの残酷さで描写されてきた。しかし、今回のように大震災という巨大なネガティブ環境を仕込んでしまっては、その憎しみは相殺されてしまいかえって純度が弱まってしまう。むしろ、普通の暮らしを送っている中学生が親を殺したいほど憎んでいて‥というドラマの方がより普遍的であるし、近隣なものとしてリアルに感じられる。
 要するに、大震災の設定を扱うのであれば、それはまた別のドラマでやって欲しいということである。そこには我々の想像を絶するような過酷なドラマがあるかもしれないし、それを園子温の独特の視点で切り込んでいけばかなり面白ものになるかもしれない。
 尚、住田以外に大震災の設定が効いているのは、本作では夜野くらいであろうか。他のキャラクターは特にこの設定を要しなくてもそれなりに成り立つ存在と言える。

 シナリオの雑さも今回はかなり目についた。例えば、強盗シーンの取っ掛かりの弱さと事後処理の曖昧さはリアリティを失しているとしか言いようがない。また、茶沢のバックストーリーの踏み込みも中途半端である。これを持って彼女の住田に対する信奉の動機づけとするなら、それは不十分と言わざるを得ない。時折挿入される悪夢シーンも、まるで展開を進めるためのご都合主義な超常現象のように見えてしまう。何らかの一定の法則性がなければならないだろう。また、包丁事件の重ねエピソードは不要に思えた。病んだ人々に対する住田の怒りを描くにしては水っぽい。

 一方、過剰なほどのバイオレンス描写と、詩的で瑞々しい園流映像演出は今回も健在だった。とにかくこの映画は殴り、殴られ、泥まみれになるシーンがやたらと多い。演者を徹底的に追い詰める園演出は、前作「恋の罪」(2011日)あたりからかなりサディスティックな方向へ確立されつつあるが、これは見応えがあった。特に、事件後の住田のアナーキーな変身振りは「気狂いピエロ」(1965伊仏)のJ=P・ベルモンドか「地獄の黙示録」(1979米)のM・シーンかといった具合で異様な迫力が感じられた。

 他にもこうしたエキセントリックな演出で幾つか印象に残ったものがある。肉便器のM女やネオ・ナチの麻薬の密売人等、非日常系なキャラはかなり振り切った存在で面白い。ただ、基本的なことを言ってしまえば、こうした演出が上手くハマるのは、やはり「愛のむきだし」や「冷たい熱帯魚」(2010日)のような、見世物小屋的な要素が強いブラックコメディだけだろう。今回のように大震災後という悲劇を重要なモチーフとして敷いている場合、余り相性が良いとは言えない。

 キャストでは主演二人の熱演は素晴らしかった。住田を演じた染谷将太、茶沢を演じた二階堂ふみ。夫々に魂のこもった演技を見せている。いつもは脇役で威圧感タップリの演技を見せている渡辺哲は、今回は気の良い住田の隣人、夜野を演じている。役どころとしては実に美味しいと言えよう。
[ 2012/02/04 01:49 ] ジャンル青春ドラマ | TB(0) | CM(0)

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