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ヤング≒アダルト

痛いけれど真実を見せてくれる。派手さはないが楽しめる。
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「ヤング≒アダルト 」(2011米)star4.gif
ジャンル人間ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ)
 ヤングアダルト小説のゴーストライター、メイビスは、アルコール依存症のバツイチ女性。現在、最終巻の執筆に行き詰り自堕落な生活を送っている。そこに高校時代の元恋人バディから赤ん坊が誕生したというメールが届く。メイビスはそれを見て嫉妬に駆られた。そして、バディと寄りを戻そうと20年ぶりに故郷へ帰る。早速行きつけの酒場へ行くと、そこにかつての虐められっ子マットがいた。メイビスの目的を知ったマットは「幸せな家庭を壊すな」と忠告するが‥。
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(レビュー)
 落ち目の小説家が自分の人生を見つめ直していくヒューマン・コメディ。

 監督はJ・ライトマン、脚本はディアブロ・コディ。妊娠した少女の葛藤を軽妙に綴った「JUNO/ジュノ」(2007米)と同じコンビである。前作同様、今回もセンスに長けた会話、テンポの良い演出のおかげで最後まで楽しめた。

 今回の物語は簡単に言ってしまえば、ダメ人間の自省の物語である。自分は都会に出た成功者‥と鼻にかけて田舎に戻るメイビスだったが、そこで待ち受けていたのは予想と違う人々の反応だった。彼女の尊厳は打ち砕かれ‥という、話だけ聞くと実にイタい物語である。
 しかし、ライトマン&コディのコンビはこれを適度なユーモアとアイロニーで包み込んで描いて見せていく。嫌みのない作りは流石に上手く、そのおかげでメイビスの葛藤に自然とすり寄ることができ、ラストの彼女の心情にも素直に共鳴できた。

 メイビスを演じたC・セロンの好演も素晴らしい。
 メイビスは若年層が愛読するヤングアダルト小説、日本で言えばラノベであろうか、それを執筆しているゴーストライターである。明らかに「トワイライト」を指す会話が劇中に出てくるので、彼女が書いてる作品もそのレベルの小説と思われる。彼女の仕事はこれのみ。しかも、本作が終わると次の仕事はない。要するに、自立できない一発屋のゴーストライターなわけである。このことを考えればメイビスの精神年齢も推して知るべし‥と言うことが出来よう。大人でもなく若者でもない、つまりタイトルにある≒(ニアイコール)の意味はここにかかっている。

 例えば、酒場でマットと再会するシーンを見ればそれがすぐに分かる。自分の言葉が相手にどう思われるか?相手を傷つけてしまうのではないか?そういった相手を思いやる気持ちが彼女には欠けている。
 また、私生活を見ても彼女の〝半大人振り″はよく分かる。アルコールとジャンクフードまみれの生活をしながら、髪は常にボサボサ。部屋は散らかし放題で、毎晩ズボンを履いたままベッドに突っ伏して眠りこける。一緒に暮らす子犬には時々餌をやるのを忘れる始末である。

 下手に演じてしまえば嫌悪感をもよおすような女に映りかねない。そこを上手く演じた所がC・セロンの功績だ。自虐的な演技で愛すべきルーザーに仕立てている。セロンと言えば今やハリウッドを代表する美人女優。それがここまで〝やさぐれ″キャラに徹したのだから見事である。「モンスター」(2003米)を観たときにも思ったのだが、彼女はただの美人女優ではない。演技に対するアプローチ、ビジョンというものを明確に持っている女優だと改め感じた。

 尚、あの独特の笑い声には、こちらも思わず笑ってしまった。また、中盤のバディの妻の演奏を聴く時の居たたまれない表情も実に見応えがあった。

 脚本はややシンプルすぎるが、約90分強という小品性を考えれば必要にして十分の内容だろう。
 また、この物語は基本的にメイビスのドラマであるが、一方で彼女の相談役となるマットの恋愛ドラマにもなっているところに注目したい。彼は高校時代の虐めで片足が不自由になった不遇の男である。かつての憧れだったメイビスの相談を受けるうちに、徐々に彼の生活も変化していく。その結末にはしみじみとさせられた。
 唯一、この脚本で苦言を呈すとすれば、車椅子の男だろうか。あれは不要に思った。

 J・ライトマンの演出も小気味よくて良かった。前作「マイレージ、マイライフ」(2009米)に比べると若干演出が平坦になってしまったが、ドラマのスケール感から言えばこの淡々とした演出は適してるという見方も出来る。ラストの締め括り方がユーモラスで良かった。
[ 2012/03/07 02:18 ] ジャンル人間ドラマ | TB(0) | CM(0)

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