金子正次、一世一代の大勝負!
「竜二」(1983日)
ジャンル人間ドラマ
(あらすじ) 三東会の幹部、花城竜二は、舎弟の直とひろしを連れて裏賭博で荒稼ぎしていた。彼は3年前に別れた妻子のことを未だに忘れられないでいた。3年前 ---竜二は暴行罪で拘置所に収監された。妻が親に頼ってどうにか保釈金を工面してもらうが、その代わりに竜二は妻子と別れさせられた。今に至って自分の愚かさを知った竜二は、更生の道を歩もうとする。
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(レビュー) ストーリーに突っ込みどころがあるし、演出も未熟な部分が多い。全編通してテレビ的なタッチで撮られており、Vシネの延長線上で作られた代物と言われても納得できてしまいそうなチープな作品である。しかし、そういった不満を補って余りある魅力がこの作品にはあると思う。それは脚本・主演を務めた金子正次の存在である。
彼自信ヤクザの世界に身を落とした事があり、その経験からこの作品は生まれたそうである。映画化にこぎつけるまでに相当苦労したらしく、元々は低予算の自主映画ということで出発したらしい。そこまで苦労して何故彼はこの映画を撮ることに執念を燃やしたのか?その理由は、本作の完成直後、彼が癌で亡くなったことからよく分かる。金子正次は自分の分身とも言える竜二というキャラクターを死ぬ前にどうしてもこの世に残したかったのである。正に生涯一作品。その強い思いが彼の演技からひしひしと伝わってきた。これは映画人と言うよりも、もはや表現者としての意地であろう。
こうした事情を知ると、金子正次の演技には俄然リアリティーが感じられる。
例えば、かつての兄貴が営む居酒屋で、彼は孤独な胸の内を吐露する。去って行った妻子とまた一緒に暮らしたい‥。けれどカタギの世界には中々馴染めない‥。不器用にしか生きられない自分に対する苛立ちと情けなさが見え隠れする。それはこの映画を撮るために様々な苦難を乗り越えてきた金子正次という人間自身の姿にダブって見えてくる。竜二というキャラクターを超えて、もはや金子正次という生身の人間が喋っているのではないかというほどパーソナルな真情が感じ取れた。彼の表現者としての<思い>が演技に乗り移っているかのようである。
一方で、バイオレンスシーンにおける容赦のない演技には鬼気迫るものが感じられた。このあたりは、ひょっとしたらヤクザだった自身の過去の経験が反映されているのかもしれない。
客観的に言って、彼の演技自体は決して目を見張るほど上手いというわけではない。しかし、上手くはないが味がある。粗削りだが勢いが感じられる。映画初主演でここまで堂々とした演技を披露した所には生来のスター性も予感させ、もし存命だったら‥と思うと急逝がしのばれる。
監督は川島透。本作が彼の初監督作品となる。先述の通り演出に未熟な部分が見つかるが、所々にセンスの良さも見られた。
例えば、竜二がアパートの窓から夜空を見上げて「何も見えない‥」とつぶやくシーンがある。川島監督はこのシーンを延々と引いていくロングテイクで切り取っている。どんどん小さくなっていく竜二の姿に、彼の寂しさ、孤独感を浮かび上がってくる。この演出は中々上手い。
また、クライマックスの音声を排したスローモーション演出も鮮烈であった。この静かさが逆に竜二の壮絶な人生を印象深く見せている。
尚、自称〝ワンシーン役者″笹野高史が本作で映画デビューを果たしている。最後の方に本当にワンシーンだけ登場してくる。出番はここだけだが中々美味しい役所だと思う。
主題歌は萩原健一の「ララバイ」。金子正次はこの歌にインスパイアされて本作のシナリオを書いたという。それだけに、映画の内容は歌の歌詞にマッチしており、ラストを締めくくるにあたっては上手くハマっていたと思う。
また、劇中には長淵剛の「泣いてチンピラ」の1節が引用されている。いかにも長淵らしい男の世界だが、これも竜二の生き様によくはまっていた。(※下記のコメントから長渕剛の方が本作の1節を引用したということに訂正)
>劇中には長淵剛の「泣いてチンピラ」の1節が引用されている。いかにも長淵らしい男の世界だが、これも竜二の生き様によくはまっていた。
全く逆だよ長渕がねパクったんだよ
最低でも作品が発表された時系列ぐらい
調べてから書いた方がいい。
まぁそもそも「花の都に憧れて~」
で始まる竜二のモノローグにも
元になった小唄があるんだけどね
それはともかく
むしろ長渕が「とんぼ」とか「オルゴール」
でこの映画をパクってるってのは有名な話
永島暎子や桜金造とも上記の作品で共演してるが、その人達の出しかたは「竜二」へのオマージュってよりは何か小バカにした感じだ
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