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日本の悪霊

ヤクザと刑事が入れ替わるシュールな怪作。
日本の悪霊 [DVD]日本の悪霊 [DVD]
(2003/07/07)
早川義夫

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「日本の悪霊」(1970日)星3
ジャンルサスペンス
(あらすじ)
 ある田舎町に県警の落合刑事が地元ヤクザの抗争を鎮圧するためにやってきた。ところが、来て早々ある女に誘惑される。目を覚ますとそこには自分とうり二つの男がいた。彼は鬼頭組の助っ人として雇われた村瀬というヤクザだった。村瀬は落合に成りすまして警察の資料からある事件を調べていく。一方の落合は村瀬に成りすまして抗争を激化させていく。
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(レビュー)
 同じ顔をした男が警察とヤクザに立場を変えて潜入する犯罪映画。佐藤慶が一人二役を怪演した幻想的な作品である。監督は黒木和雄。

 いわゆるこれも入れ替わりコメディの系譜に入る作品と言っていいだろう。基本的にはシリアス・ベースのサスペンス作品であるが、同じ顔の男が警察とヤクザを行き来する所に、やはりどこかブラックなコミカルさが派生する。もっとも、それによって本来のシリアスさが損なわれるわけではない。このコミカルさが合わさることで一種異様な雰囲気を持った作品になっており、いかにも初期・黒木和雄的なシュールな世界観が構築されている。

 まず、物語の語り口が面白いと思った。落合と村瀬、両者の視点を切り替えながら物語は展開されていく。この佐藤慶は一体どっちの佐藤慶だろうか?と思考を混濁させるような構成になっている。
 たとえば冒頭は落合の視点で出発する。その後、村瀬の視点に切り替わり自分とそっくりな落合を見て驚く‥という風に撮られている。落合の視点だと思っていたら、いつの間にか村瀬の視点に切り替わっていた‥というように、見る側を混乱させるような作りになっているのだ。
 その後も視点の交錯は繰り返されていく。ここまでくるともはや不合理極まりないカオス感まで感じられ、何となくD・リンチ的な作風も連想させられた。
 もっとも、二人は全く同じ外見というわけではく一応差別化はされている。それぞれに黒と白のスーツを着ているので一見して判別可能である。したがって、よく見ていればどちらの佐藤慶なのかは分かる作りになっている。

 映画は後半に入ってくると、それまで均等だった視座が徐々に村瀬の視座に偏っていくようになる。彼は警察の資料から過去の左翼系学生活動家の事件を調べ上げていく。これが本作のテーマとなっている。これにはなるほど‥と思わされた。
 というのも、監督の黒木和雄は後に「竜馬暗殺」(1974日)で、時代設定を江戸末期に移し替えて、当時の学生運動の終息を風刺しているからだ。それと今回の作品は根幹の部分で結びついているような気がした。

 要するに村瀬がやりたかったことは過去の学生運動家たち、つまり〝日本の悪霊”の弔いなのだと思う。彼は活動家達の恨みを晴らそうとして落合に成り済まして隠密行動をしたわけである。そして、その顛末にはやはり「竜馬暗殺」に似た虚無感が感じられた。志半ばで散っていった活動家たちの怨念が虚しく響き渡って終幕する。
 傍から見れば村瀬の切望は実に後ろ向きなものである。当時の学生運動はすでに風前の灯火で、彼がいくら孤軍奮闘してもそれによって世界が変るわけではないからだ。したがって、何となく未練がましくも感じられた。

 佐藤慶は一人二役という難役を起用に演じ分け好演している。
 しかし、それ以上にひときわ異彩を放つ人物がこの映画には二人登場してくる。いずれも特別出演というクレジットのされ方をしている。

 一人は活動家のリーダーを演じた土方巽である。彼は知る人ぞ知る暗黒舞踏の創始者である。舞踏そのものを見たことはないが、彼は映画にも数本出演していて、石井輝男のカルト作「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」{1969日}では前衛的な舞踏を披露していた。その光景はいまだに強烈に印象に残っている。今回、土方が演じるのは村瀬のかつての盟友にして学生運動のリーダーである。正しく〝日本の悪霊”を体現するかのような異様な風体が強烈だった。

 もう一人は、当時の人気フォークシンガー岡林信康である。こちらは初見であるが、そのインパクトたるや凄まじかった。彼は物語と関係なく度々登場しきて弾き語りをするのだが、そのパフォーマンスがとにかくパワフルで凄い。ある時は住宅街のど真ん中で、ある時は大草原で、自由奔放に己が主張を歌詞に乗せて歌い上げていく。特にラストの歌はかなり過激な内容で、本作で最も強烈な存在感を放っていたのは実は彼だった。
[ 2012/03/23 02:01 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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