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ヒューゴの不思議な発明

こういうのは見ていて実に恥ずかしくなってくるものである。しかし、恥ずかしがって作ったら負け。スコセッシはそこをきちんと弁えて作っているから偉い。
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「ヒューゴの不思議な発明」(2011米)star4.gif
ジャンルファンタジー・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 1930年代のパリ。孤児のヒューゴは叔父に引き取られて駅の時計台に住みながら時計の整備をしていた。彼が一番大切にしているのは父が残した壊れた機械人形である。それを修理するためにヒューゴは駅構内の玩具屋に忍び込んで部品を盗んでいた。しかし、とうとう店主のジョルジュに見つかってしまう。ジョルジュはヒューゴが持っていた機械人形の設計図が書かれたノートを見て驚いた。それを取り上げられたヒューゴは罪滅ぼしとして店で働かされることになる。
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(レビュー)
 M・スコセッシ監督がこれほどにハートウォーミングな作品を撮るとは誰が想像できただろう。正直な所スコセッシらしさは感じられないが、老いて色々と思う所があったのだと思う。映画人としての思い。それが映画草創期へのリスペクトに繋がり、このような作品が生まれたのだと考えられる。彼の映画愛が詰めこまれた珠玉の一遍となっている。

 本作はいわゆる映画マニアにはたまらない作品となっている。過去の名作のオマージュが様々な形で登場してくるからである。ただ、タランティーノの映画のように、知っている人だけが楽しめればよい‥というような作りになっているわけではなく、過去の作品を知らない人でもそこそこ楽しめるようになっている。劇中にオリジナルの映像が出てくるので、どの部分がどのオマージュになっているかが一発で分かる仕掛けになっているのだ。映画とは大衆娯楽である。それを弁えた上での親切設計である。自分はそこに好感が持てた。

 物語は、ヒューゴがいかにして亡き父が残した機械人形を生き返らせることができるか?そこを軸に展開されていく。児童冒険談というノリで軽快に進む所が心地よい。
 ただし、後半からドラマの視座がガラリと変わる。ヒューゴのドラマと並行しながら、機械人形の秘密を知るジョルジュのドラマも展開されていくようになるのだ。こちらは彼の過去の悔恨と再生のドラマになっている。一部で設定のための設定はあるものの、この二つは精錬と橋渡しされており、構成自体は良くできていると思った。ラストは見事に一つの鞘に納まるのでカタルシスも感じられた。

 ただし、幾つか気になる点もあった。
 一つはジョルジュが過去を反芻する所で、第1次世界大戦を引き合いに出してきたことである。確かに戦争ともなれば映画どころではなかったろう。しかし、そのせいで自分の映画を不要と言うのはいくらなんでも短絡過ぎるという感じがしてしまった。何故なら映画は戦後、再び脚光を浴び大衆の娯楽として夢と希望を与えることになったからである。現に劇中にも登場するB・キートンのコメディなどは1920年代に作られた作品である。大衆は決して映画を必要としなかったわけではない。戦争が一要因であったことは否定しない。しかし、本当の所はジョルジュの映画が世間から飽きられてしまった‥というのが事実なのではないだろうか。
 ジョルジュの映画は基本的に舞台劇的で常にカメラは正面から捉えた構図が続く。代わり映えの無い画面構図、平板なアクションでは、キートンやチャップリンの映画に人気を奪われてしまったのも無理もない話である。更に言えば、映画の作り方自体も大きく変わっていった。ジョルジュのようなプライベート・スタジオでは大きな製作会社が作る映画には到底叶わなくなってしまったのである。つまり、彼の映画が時代の流れと共に消えて行ったのは、戦争がある無しに関わらず必然だったわけである。そこの所をもう少し詳しく描いて見せてくれると、ジョルジュの悲壮感は更に増したかもしれない。

 もう一つは好みの問題としか言いようがないのだが、ラストの締めくくり方である。少し小奇麗にまとめすぎという感じがした。個人的にはその手前で終わってくれた方が好みである。

 映像は実にゴージャスで見応えがあった。美術とVFXについては申し分ない。
 尚、本作はスコセッシ初の3D映画である。駅の構内を縦横無尽に駆け巡るオープニング・シーンを筆頭に、様々な場面で3Dを意識した映像設計が図られている。月と公安官とジョルジュのクローズアップ、このあたりに最も3Dの効果が感じられた。
 ただ、アクション映画ではないので決して3Dだけに特化した作品と言うわけではない。見世物映画であると同時に内容勝負の映画でもあるので、特に3Dにこだわらなくても良いような気はした。

 キャストはまずまずの演技を見せている。中でも印象に残ったのはサシャ・バロン・コーエン演じる公安官である。やりたい放題の普段の彼もいいが、本作のようなアク抜きされた妙演も新鮮で良い。戦争の後遺症という影を笑いに転嫁した上手さを評価したい。憧れの花屋の娘に声をかけられない、いじらしさも良かった。また、老カップルの関係も微笑ましく見れた。本作はサブキャラの魅力が光っていたように思う。
[ 2012/04/03 01:42 ] ジャンルファンタジー | TB(0) | CM(0)

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