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私は二歳

斬新な手法で紡いだ育児映画。ブラックでシニカルでファンタジックで面白い。
私は二歳 [DVD]私は二歳 [DVD]
(2007/01/26)
船越英二、山本富士子 他

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「私は二歳」(1962日)星5
ジャンル人間ドラマ・ジャンルコメディ
(あらすじ)
  東京の閑静な団地。平凡なサラリーマン五郎と主婦千代は、2歳になる息子太郎と慎ましくも幸せな暮らしを送っていた。太郎は病弱でたびたび医者の世話になっていたが、すくすくと成長していった。ある日、五郎の兄夫婦が仕事で転勤になる。五郎たちは母親の面倒を見るために実家に引っ越すことになるのだが‥。
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(レビュー)
 2歳の幼児・太郎の目線で周囲の悲喜こもごもを綴った名匠・市川崑監督の異色作。

 原作は同名の育児書だが、それを市川監督の妻・和田夏十が見事に斬新なホームドラマに脚色している。彼女は市川監督との共同ペンネーム・久里子亭(くりすてい)名義でも「悪魔の手毬唄」(1977日)を執筆しており、脚本家として長年、市川作品を影から支えてきた功労者である。

 物語はまだヨチヨチ歩きの太郎のナレーションで展開されていく。ナチス時代の到来を3歳児(正確には3歳で成長するのを止めてしまった少年)の目線で綴った傑作「ブリキの太鼓」(1979西独仏)を彷彿とさせる部分もあるが、本作の方がそれよりも10年以上も前に作られていることに注目したい。斬新さという意味では今作の方が先進的であり、育児書を元にこうした発想でドラマを語ろうとした和田夏十の底知れぬ才能にはただ、ただ感服するほかない。

 しかも、この幼児のナレーションが実にシニカルで面白い。両親の喧嘩や医者の診察、祖母の愛といったものを、どこか達観した眼差しで眺め、2歳児のくせに変に大人びているのだ。そこにナンセンス・コメディ的な面白さが沸き立ってくる。

 そうかと思えば、大人は何故仕事をしなければならないの?大人は何故嘘をつくの?といった無垢な疑問も見る側に投げかけてくる。そりゃあ食っていくためには仕事をしなければならないし、周囲と上手く付き合うためには多少の嘘は必要である。しかし、様々なしがらみの中で生きる大人と違い、自由気ままな2歳児にはそれが疑問に思えてしまうのだ。何気に人生哲学の根幹を問い正されているような気がして、ちょっとドキリとさせられたりもした。

 映画は太郎の主観で紡ぐ物語と同時に、両親と祖母の日常ドラマも展開されていく。こちらは夫婦間の冷め切った関係、嫁姑の軋轢関係といった複雑な家庭問題が絡んでくる。やや通俗的な感じもするが、女性の強さが雄弁に語られている所は注目に値する。徐々に女性が強くなっていった時代が如実に反映されているような気がした。

 例えば、しっかり者の妻・千代に窘められるダメ亭主・五郎の情けなさ、対立関係から徐々に雪解けとなり家庭の実権を握っていく嫁姑のしたたかさ。こあたりを見ると、子供を産める女とそうでない男の性差、つまり母性の偉大さというものを痛感させられる。
 本作には他にも様々な母親達が登場してくる。例えば、10人の子供を抱える千代の姉などは、ほとんど母性の極みと言わんばかりの〝肝っ玉母さん"振りで印象に残った。この逞しさの前では男などただの幼稚で身勝手なガキにしか見えなくなってしまう。
 逆に、男性陣は夫の太郎以外はほとんど登場してこない。非常に存在感が薄く、このことを鑑みても本作には明らかに母性讃歌的なテーマが読み取れる。

 ただ、このメッセージは実に崇高であるし十分納得する所ではあるのだが、いささかそれが突出している箇所がある。例えば、セリフとしてストレートに発せられてしまうと、どうしても押し付けがましく感じられる。このあたりはさじ加減を効かせてほしかった。

 市川監督の演出は今回も冴えわたっている。三日月をバナナに見立てた幻想的なアニメーション、人形を使ったコマ撮り等、ファンタジックで少しキッチュな所に市川演出の本領が感じられた。異色な作劇同様、こうした不思議なタッチが所々に見られるのも本作の妙味だろう。
[ 2012/04/16 01:35 ] ジャンルコメディ | TB(0) | CM(0)

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