スタイリッシュな密室サスペンス劇。
「ロフト.」(2008ベルギー)
ジャンルサスペンス
(あらすじ) 建築士ビンセントが建てた高級マンションのロフトで女性の変死体が発見される。そこはビンセントと4人の友人達が共有する情事専用の部屋だった。鍵は5人だけが持っている。一体誰が彼女を殺したのか?疑心暗鬼に襲われる中で意外な真実が明らかになっていく。
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(レビュー) 密室殺人事件に翻弄される5人の男たちの対立をミステリアスに綴ったサスペンス映画。
物語は警察で取調を受ける5人の回想形式で綴られる。現実と過去を巧みに交錯させながら事件に至る経緯が解明されていく。意外な展開と伏線の張り方の巧みさで最後まで飽きなく見れた。
また、5人のキャラクターも夫々に明確に色分けされていて面白い。プレイボーイの中年建築士ビンセント、真面目な精神科医クリス、粗暴な性格でトラブルを撒き散らす彼の弟フィリップ、女好きなお調子者マルニクス、神経質で気の弱いルク。5人は夫婦同伴で食事をするほど仲が良い。しかし、それは表向きで、実は‥というところが今回の事件に繋がる重要なポイントだ。5人のギクシャクした関係、夫々の背景に存在する秘密。このあたりが事件の解明をスリリングに見せている。
例えば、ビンセントとクリスには夫々に恋人がいて、彼女たちが事件のキーパーソンのように見えてくる。また、クリスとフィリップは異母兄弟で、彼ら間の愛憎も何だか怪しい。ビンセントの周囲には市長や建築王といった腹黒そうな連中がうごめいていて、これまた何やら胡散臭い。それぞれの過去や置かれている状況を考えると、俄然この推理劇は面白く見れるようになる。
ただ、いよいよ謎解きとなる終盤は若干性急に写り、ややもするとご都合主義に見えなくもない。そもそも何故犯人はロフトに戻ったのか?そして、何故真相を喋り捲るのか?この辺りの必然性が弱いのが難点である。
また、細かく見ると幾つか突っ込みたくなるような箇所が他にもあった。よく考えられている作品だと思うが、細部の詰めの甘さが惜しまれる。
また、カメラワークが懲りすぎという感じがしなくも無い。別にアクション映画ではないので、ここまで画面を動かす必要はないだろう。全体的な映像の緩急が付けられてないため、緊迫感を煽るような演出ものっぺりとした印象になってしまう。
この監督は自分のビジュアル・センスをこれ見よがしに押し付けてくるような所がある。本作は背景美術が中々凝っていてスタイリッシュでおしゃれなものが多い。おそらくこれらも監督のデザイン・センスなのだろう。確かに今回のような密室劇に近い映画では、場面のメリハリを効かせられない分、こうしたビジュアル上の工夫は必要となってくる。とはいえ、カメラワークにしろプロダクション・デザインにしろここまで凝ってしまうと、何だかうっとおしい。物語のリアリティも余り感じられなくなってしまう。このあたりのさじ加減は非常に難しい所であるが、今作はやり過ぎな感じを持った。
尚、鋭角的にデザインされたタイトルバックは、A・ヒッチコック監督の傑作「北北西に進路を取れ」(1959米)のオープニングを彷彿とさせて面白い。おそらくこれも監督のこだわりなのだろうが、これについては中々良いセンスをしていると思った。