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KOTOKO

Coccoの熱演に目を見張る。
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「KOTOKO」(2011日)星3
ジャンルサスペンス・ジャンル人間ドラマ
(あらすじ)
 赤ん坊を抱えたシングルマザー琴子は、他者が善と悪の二重に見え、愛する我が子を奪われるのではないかという強迫観念に襲われていた。唯一、世界が一つに見えるのは歌を歌っている時だけだった。しかし、彼女は度々自傷行為を繰り返し、ついに児童虐待の疑いがかかり赤ん坊と引き離されることになる。孤独の淵に立たされた琴子は自殺を考えた。そこに著名な小説家・田中が現れる。彼は琴子の歌声に惹かれてプロポーズするのだが‥。
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(レビュー)
 精神を病んだシングルマザーの愛を幻想的なタッチで描いた人間ドラマ。

 製作・監督・脚本・撮影・編集は塚本晋也。主演は歌手のCocco。彼女は原案・美術・音楽も兼ねている。二人は企画段階から携わっており、そういう意味では今作は完全に二人の共作と言えるだろう。

 塚本晋也と言えば、「鉄男」シリーズに見られるようにエッジの効いた作風が売りだが、今回も彼自身の独立プロダクション、海獣シアター製作による作品だけあってその作家性は存分に出ている。通常の商業映画では描かないであろう過激なバイオレンスシーンも登場してくるので、見る人を選ぶ作品かもしれないが、塚本タッチは存分に出ていると思った。

 とはいえ、演出は基本的に淡々としたドキュメンタリータッチに拠っている。いわゆる塚本タッチが見られるのは、琴子が見る幻想シーンの中のみである。静と動の抑揚のつけ方は中々上手く、眩惑されながら画面にグイグイと引き込まれた。

 ただし、一部でシビアなシーンにユーモラスなタッチが盛り込まれていて、これは少し邪魔に映った。例えば、琴子と田中のドアを挟んだやり取りにおける間の抜けた効果音、タオルを巡るブラックコメディなやり取りには違和感を覚えてしまう。

 監督自身が撮影・編集を担当するだけあって映像も今作の見どころである。カオス感を強調した手振れ撮影は今回も迫力があって大いに興奮させられた。
 また、神経を逆なでするようなノイジーな効果音も迫力がある。サウンドは塚本作品におけるもう一つの生命線と言っていいだろう。

 そして、今回特筆すべきは解放感に満ちた美しい沖縄の風景である。これまでのメタリックな塚本ワールドにこうした柔らかいタッチを織り込んできたことは興味深い。今後の作風に変化が出るのかどうかは分からないが、少なくとも今まで余り見られなかった映像である。

 物語は母性の尊さを描いたもので極めて普遍的なものに思えた。育児の苦労とはまた何と古風な‥と思うかもしれないが、常に危険と隣り合わせなな現代社会をドラマの背景に忍ばせた点は注目したい。それによって"同時代的"な作品になりえている。

 琴子は他者が二重に見える。一人は善人でもう一人は彼女が見る幻、つまり悪意を持った殺人鬼や暴漢だ。彼女はこの幻に襲われながら可愛い我が子を守らなければ‥という育児ノイローゼにかかっている。少し作りすぎな設定という感じも受けたが、劇中のテレビニュースに登場する数々の凶悪事件を見ていると、確かに今の世の中はどこにでも"死"が存在する危険な社会のように思えてしまう。このあたりの風刺の効かせ方は中々鋭いと思った。そして、映画はこの生きにくい現代社会で琴子がいかにして我が子を守ろうとするか。その葛藤、過激な愛を描いている。つまり、これが本作のテーマであるところの"同時代的"な母性愛に繋がっていくのだ。

 ただ、テーマ自体は理解できるのだが、純粋にドラマとして見た場合、若干密度が薄い。塚本作品はいつもそうなので別にドラマ性を求めて見ているわけではないのだが、今回は求心力に欠けると言う気がした。少なくともこの作劇では、琴子の不安や彼女を支えようとする田中の無償の愛に擦り寄ることは難しかろう。そもそも琴子の過去はほとんど不明であり、見る方としても彼女の人生をトレースできないままこの物語を追いかけていくしかない。あるいは赤ん坊が生まれる以前から精神薄弱に陥っていたという可能性もあるのだが、それを示すようなヒントも劇中には登場してこない。ドラマ自体はかなり不親切な作りに思えた。
 むろん、そう思うのは自分が男だからかもしれない。もしかしたら子を持つ母親が見れば琴子の感情にすんなりシンクロ出来るのかもしれない。

 逆に、田中が何故琴子を好きになり、そして去って行ったか?これについては色々と想像する余地があって面白く見れる。彼は小説家である。小説家に限らず何かを作り出す人間は得てして孤高の存在であることが多い。一つの作品が出来ればまた次の作品へ‥。要は一つの場所に留まることができない永遠の旅人のようなものなのだ。したがって、田中が黙って琴子の前から去って行ったのは何となく理解できた。

 キャストでは琴子を演じたCoccoの熱演が光っていた。母親としての愛、生への喪失感を、時に過激に時に陶酔的な歌唱で見事に体現している。いきなりの演技でこれだけの熱演は実に見事と言えよう。本作にかける並々ならぬ思いはその熱演から十分に伝わってきた。
[ 2012/05/04 01:37 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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