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ドライヴ

孤独な男の哀愁をクールに活写したバイオレンス映画。
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「ドライヴ」(2011米)star4.gif
ジャンルサスペンス・ジャンルロマンス
(あらすじ)
 男は昼間は自動車修理工場で働きながら、時々映画のカースタントのアルバイトをしている。しかし、彼にはもう一つの顔があった。それは類まれなドライビング・テクニックで強盗犯を逃がすという裏の仕事だった。ある日、彼は同じアパートに住む母子と顔見知りになる。その後、故障した自動車を修理してやったことから次第に交流が始まる。孤独だった男の心は少しずつ癒されていき、彼の生活にも潤いが出始めて行った。ところが、そこに刑務所に入っていた彼女の夫が戻って来る。
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(レビュー)
 天才ドライバーが愛する母子のために犯罪に手を染めていくサスペンス映画。

 まず、この主人公の設定。どう考えても、W・ヒル監督の「ザ・ドライバー」(1978米)の主人公を彷彿とさせる。そこはオマージュなのだろうか?それとも単なる偶然なのだろうか?
 それはともかくとして、寡黙でミステリアスな能面表情を決め込む本作のドライバーは、社会の片隅にひっそりと暮らすアウトロー然とした造形で中々に魅力的であった。この主人公のキャラ立ちだけで、このドラマはほぼ成功しているような所がある。

 物語はヤクザ者が孤独の淵に見つけた愛に最後の人生をかけていく‥という、言ってしまえばよくあるドラマである。しかし、物語の凡庸さを補って余りある監督ニコラス・ウィンディング・レフンのスタイリッシュな演出が映画全体を大いに引き締めていて、ラストまで一時も目が離せなかった。同年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞したのも納得である。

 まず、冒頭の強盗シーンからスリリングで一気に画面に引き込まれた。タイムリミット感を持たせた演出がハラハラドキドキの興奮を味あわせてくれる。物語はその後、ドライバーと隣人の母子の温かい交流を描いていく。そして、刑務所から母子の旦那が出所してきてドラマはサスペンス方向へと流れていく。ここから物語はボルテージを下げることなく一気にクライマックスまで突っ走っていく。大筋だけなら実にシンプルなドラマだが、それを飽きなく見せたレフン監督の演出力は見事といえよう。

 また、途中で2度ほどテクニカルな構成術が見られる。時制を前後させた構成である。これは見る側に意外性をもたらすという効果と、要所だけを見せることで物語をコンパクトにまとめるという効果。この二つの効果がある。こうした構成術もレフン監督の卓越した演出力の成せる技だろう。

 キャラクターは非常にミニマムに設定されている。余計な登場人物を一切登場させないため、物語は必要以上に膨らまないで済んでいる。

 ただ、こうしたミニマムな語り口は、見ようによってはストーリー上の"穴"を生んでいる‥という言い方も出来てしまう。
 例えば、強盗事件がニュースで流れたら、普通はR・パールマン演じるニーノは真っ先に母子の近辺を怪しむだろう。そうなれば当然、隣に住むドライバーの素性にも気が付くはずである。また、それ以前にマフィアの報復だってあるのが普通だと思う。こうしたストーリー上の綻びは、普通は詳細に描くことで補完されるものだが、本作は敢えて情報を必要最小限に留めてしまっているので、物語の"穴″となってしまう。このあたりの作りは賛否あるかもしれない。

 主人公のドライバーを演じるのはライアン・ゴズリング。今回のキャラクターは名前も過去も不明である。一切の素性が分からない所、寡黙な表情の裏に暗く哀しい過去を色々と想像してしまいたくなる。そして、それを上手く匂わせたライアン・ゴズリングの演技は見事である。正に好演である。また、パッと見は文科系優男だが、その外見とは裏腹に瞬間的に凄まじいバイオレンスを繰り出し、内に秘めたる暴力性を静かに体現した所も大いに評価したい。何となく「タクシードライバー」(1976米)の主人公トラヴィスを彷彿とさせるような所もある。
 
 隣人の母親役を演じたC・マリガンも中々の佇まいを見せている。幸薄そうなロリータ・フェイスにC・リッチに似たチャーミングを感じる。惜しむらくはもう少し母性を全面でに出して存在感を出してほしかったか‥。先述の通り、この映画はストーリーも人物設定も非常にミニマムに作られている。その煽りを食らった感じがした。

 尚、一部で物議を醸したバイオレンス・シーンだが、これについては確かにヤリ過ぎといった印象を持った。リアリティ云々を言ってしまうと、とてもじゃないが嘘臭く映ってしまう。ただ、ここは見世物的なハッタリを効かせた‥と解釈したい。また、ハッタリということで言えば、銃の音やタイヤの軋む音等、音響の迫力も中々の物である。

 ラストの締めくくり方も賛否あろうが、個人的にはこの主人公にしてこの幕切れは実にしっくりと来た。
 劇中には何度も夜の都会を俯瞰で捉えたショットが登場してくる。映画はそれをバックにしながら、ドライバーの「この町には何千という通りがある」というクールなナレーションで始まる。まさにドライバーの人生という名の"通り"もその中の1本になるのだろう。であれば、深い闇へと続くロードで終わるラストは、主人公の行き先を暗示しているとも言える。OPとEDを繋げたこの演出は、ドライバーの孤高性を見事に印象付けている。
[ 2012/05/14 01:14 ] ジャンルサスペンス | TB(0) | CM(0)

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